197 ディメンションルーム
異空間魔法の説明を見ると、異空間を使用して発動する魔法と書いてあったが、よく分からなかった。
とりあえず異空間室が使えればいいかと思い、ラドンが使っていた異空間室を思い出しながら、挑戦していたが、何が悪いのかなかなか出来ないでいた。
何度目かの挑戦で、やっと異空間が開いた、それと同時にメニューの魔法欄にも異空間室の文字が出てきた。
異空間が開いた穴は、真っ暗で入るのにも躊躇うような暗闇になっていたので扉をイメージしたら、それが現実となり、人
ひとりが入れるくらいの扉が出来た。
僕は扉のノブを回し扉を引いた。
『ギィー』
扉を開け中に入ると、そこは何もない真っ白な空間になっていた。
高さは三メートルくらい、広さは一辺が三十メートルほどの何もない正方形になっていた。
異空間室は出来たが何もない、ただ広いだけ…、これをどうしろというのだろうか。
僕の魔法の失敗なのか、それとも真っ白な空間に自分で家具を入れないといけないのか、疑問が浮かんでくる。
ラドンに聞いてれば良かったな、後悔してももう遅い。
ラドンの異空間室はどうなっていたか、よく思い返していた。
室内はどうなっていた、壁は木の板を組み合わせて作られていた。
台所もシャワールームもあったが水はどうしていたのだろうか、暖炉も付いていたし大きなベッドもあった。
入り口は狭いのにどうやって入れたのだろうか。
あれ、そう言えば僕は何故、入り口に扉を付けれたのだろう。
もしかして、イメージで家具を作ることが出来るのか、僕はテーブルをイメージしてみると、そこにテーブルが出来上がった。
成る程、分かったぞ。
僕の異空間魔法の中では、僕のイメージ通りの物が出来るようだ。
魔法を解くと消えるということはないよね、そう思いながら一度魔法を解除して、もう一度異空間魔法を発動する。
扉は付いてあるが、中はどうだろう。
扉を開け中に入ると先程作ったテーブルが、ポツンと一つだけ置いてあった。
この魔法は使える。
野宿する必要ないし、休みたい所で異空間室を開けば休めるし、後は内装工をどうするかは皆で決めるか、あと人がいる状態で異空間
室を閉じることが出来るのか確かめたかった。
魔法名をディメンションルームと変え、魔法を使いやすいようにしてみた。
そして僕は夕食の準備をキャンピング馬車の前で作っていたが、ディメンションルームの中に人がいることが出来れば、馬車なんて要らないと思う。
それか普通の馬車に入り口だけ作って、移動すれば異空間内は振動も来ないから、これが便利か、これも後で皆で話し合うか。
日が暮れ始めた頃、村人達が何やら騒ぎ出したので、僕は少し気になったので聞いてみたら、今日は神様への豊作祈願の祭りらしい。
1ヶ所ある小さな祠に神様が祭られており、そこに着物やお酒、貢物を飾ってあった。
「これは翔さん、先程はありがとうございました。
お陰で皆に酒や食事を振る舞う事ができました。
翔さんも一緒にどうですか」
「村長、それは有りがたいですね」
そう言ったがテーブルの上に置かれていたのは、皆、自宅から持ってきたお酒一瓶と、ほんの僅かな料理だけだった。
「翔さんにとっては、物足りないでしょうが、私達貧しい村人達にとっては、久しぶりのご馳走なんですよ」
「そんなんですか」
村人達を見てみると、確かに皆ガリガリに痩せていた。
問題は税金が高すぎるということらしい、食べるのにも困るのに税金を納めないといけないなんて、バカみたい。
何の為に生きているのか分からない。
何だか可哀想になり、僕は村長に料理を振る舞う事を願い出た。
村長は、そこまでしてもらうには…、と言っていたが僕は料理を作り始めていた。
仲間の分は先程作ったから、あとは材料が足りるかどうかだけど、まあ、材料は狩るか街に買い出しに行けば良いから、使いきる覚悟で料理を作るか。
リングボックスから酒樽を一つ出して、皆に振る舞ってその間に料理を作り、次々と提供していく。
なんか毎回宴会しているような気がするが気のせいだろうか、仲間が動けるようになるまでは、ここに滞在しないといけないから、少しでも印象を良くしとかないとね。
宴会は夜遅くまで続き、護衛の騎士達もいつの間にか参加していた。





