192 復活
「……、」
「…、し…、」
「…、翔様」
あれ、この状況は前にもあったぞ。
そうだ、この世界に飛ばされた時、戦場のど真ん中に居たっけ。
あの時は何も分からず、目覚めてセレナさん達に付いて行ったな。
その時と同じ状況ということは王竜に殺されて、よく異世界の物語である最初に戻ったということか。
折角、ここまでレベルが上がったのに、また1からやり直しになるわけ、でももう一度やり直せるのなら、だいたいのイベントは分かるので、もっとベストな異世界生活が出来るのではないかと思ってしまう。
「翔様、早く起きて下さい」
も~う、さっきからうるさいな起きますよ。
あれ、でもセレナさんに起こされるはずなのに、男の人の声だ。
何かがおかしいと感じた。
この世界に来たとき、地面で寝ていたはずなのに、今は何だか柔らかい物の上で横になっていた。
手を動かし、感覚で確かめると毛が少し長く柔らかい感触がする。
そうまるで絨毯のような感触だ。
何かが違う。
そう思い、ゆっくりと目を開けてみた。
そこにいたのは、ラドンと精霊達の四人が僕の回りで心配そうに見ていた。
「僕は一体、どうなったんだ」
「良かった、ご主人様」
「良かったです~」
「心配させないで、ダーリン」
「目が覚めたです、心配したです」
「翔様、ご気分はどうですか、大丈夫ですか」
「ああ、ラドン大丈夫だけど、僕は確か王竜に殺されてたはずでは」
「それについては、王竜様よりお話がありますので、アナンタと一緒に謁見してください」
僕はゆっくりと起き上がろうとした時、得たいも知れない疲れと脱力感が襲いかかって来た。
一瞬、ふらついて倒れそうになるが、精霊達が支えてくれた。
「ありがとう」
「大丈夫ですか、まだ休まれたほうが良いのでは」
「大丈夫、ちょっと目眩がしただけだから」
そう言って、僕は体に力を込めゆっくりと立ち上がったが、まだ少しふらついていたので、近くにいたエアルに肩を貸してもらった。
「ずるいです。エアル」
「代わりなさい、エアル」
「嫌です、私が先に取ったもん」
まだ僕はふらふらなのに、精霊達がうるさかったので、代わりばんこに形を貸してもらう事になった。
隣ではアナンタがまだ寝ていた。
先程まで寝ていたのは、毛皮のようだ。
熊のような魔物で身長は4メートルくらいか、魔物の形のまま絨毯のようにされていた。
「アナンタ、起きろ」
「むにゃむにゃ、もう食べられないです~」
また食べ物の夢を見ているらしい。
そう食っちゃ寝竜だ。
僕はそっと耳元で、
「今日は、飯抜きだ」
と呟いてみたら、アナンタはいきなり泣き出して、
「イヤだイヤだ、ご飯頂戴、何度もするから」
等と言っていた。
精霊達には、「ご主人様、ひどい」と言われる始末、泣くとは思ってなかったし、そうそうにアナンタを起こした。
アナンタは辺りをキョロキョロ見渡し、最初に出た言葉が、
「私のご飯どこ」
だった。
その言葉の所為か分からなかったが、ラドンが、
「謁見の前に、お腹が空かれたでしょうから、先にお食事にしましょうか」
と言われたので、食事にすることにした。
何故か、僕もかなりお腹がすいて『グゥグゥ』とお腹が鳴っていた。
どうして僕とアナンタは生きているのか不思議だったけど、王竜に会えば全て分かると言われたので、腹ごしらえして体力を回復させてから謁見することに為った。
何故だか精霊達も一緒に食事をしていた。
ラドンも一緒に食事をしていたが、僕と変わらない量を食べていた。
アナンタが沢山食べるのは竜人族だからという訳ではなかった。





