167 ディープインレット
ディープインレットまでの街道は、フグエン山からの噴石や、噴火によって流れ出た溶岩によって固められた土地、溶岩大地となって
おり、その中を縫うように道が通っていた。
街道はフグエン山からかなり離れているが、噴火によって飛ばされた噴石は、大きい物は直経二メートルは優に超え、至る所にゴロゴロと転がっていた。
回りは草木は生えておらず、溶岩で燃えたのだろうか、木の姿のまま炭となった残骸のみ所々にあった。
「この辺りは凄いわね」
「もう何十年も噴火してないと聞いているなり」
「溶岩が流れた後が、山から海まで続いているなんて何キロ流れてるのかしら」
「それだけ、噴火が凄まじいということだろうか」
殺風景な景色を眺めながら、自然の脅威に驚いていた。
二時間ほど街道を進むと、予定通りディープインレットの村に着いた
村は城壁や村を守る為の壁はなく、防護壁による結界のみで守られていた。
村の回りは畑で囲まれており、10名ほどの兵士に守られながら、農民は農作業を行っていた。
入口にいた兵士に用件を伝え、中に通された。
村の中は、子供と老人のみしか見当たらず、大人達は農作業か狩りに出掛けているようだった。
こぢんまりとした村には、小さな木造の民家が25軒、村長宅が少し大きめで1軒、兵士の住宅が長屋になっていて1番大きい木造が一軒あった。
村長宅はすぐ分かったので、クエストの件を聞きに向かった。
村長宅のドアをノックする。
『コン、コン、コン』
「村長さんいらっしゃいますか」
「はいはい、何でしょうか」
ドアを開けて出てきたのは、白髪頭に白い髭、杖をついた村長らしき老人たった。
「村長さんですか」
「ああ、そうだが」
「クエストの依頼で来ました。
詳しくお聞きしようと思いましてお伺いしました」
「それはそれはわざわざありがとうございます。
ここではなんですので、中にどうぞ」
村長宅と言っても広さは12畳くらい、その中に古民家風で少し高くなった居間が6畳、残りの半分が土間になっており、そこに台所、薪式の釜戸があった。
壁は土壁で屋根は茅葺き屋根になっていた。
居間に通され、1人ずつにお茶を差し出す。
「今、若いもんは畑に要っておって、ワシしかいないんじゃ」
「早速ですが、クエストの件お聞きしたいのですが」
「分かった、ここから山沿いに行った所に溶岩で出来た穴が幾つもあるんだが、その内の1つにフレイムゴーレムが住みつき、
せっかく育てた畑を荒らしに時々やって来るのじゃ。
兵士達では太刀打ち出来ないので、ギルドに依頼したんじゃ」
「分かりました、フレイムゴーレムがどの穴に住みついているかは、わからないのですね」
「すまぬが、そこまでは分かっておらぬ。
あと炎系の魔物も沢山いるから気をつけなさい」
「分かりました。
あと馬車を村の外でもいいので止めてもいいですか」
「中に止めなくていいんか」
「はい、邪魔にならないように外で充分です」
「まあ、どこでも構わんが」
「ありがとうございます。準備が整い次第調査します」
僕達は村長宅を出て、村の外の空き地に馬車を止めた。
馬車自体に防護壁が張れるので、中に止めても外に止めても変わらなかった。
「早速、探してみますか」
「そうなりな」
「ラウドや、沙羅、空、エマなどは留守番してた方がよくないか」
「いいえ、私達も行きますわ」
「危ない目に会うかも知れないよ」
「翔様が居なくなるよりはましです」
こうなったらテコでも動かないだろうから、仕様がないな。
「ルークはエマを守って、神楽と茜は空、沙羅、ルナ、ミディア、クロ、アナンタを守ってくれ。
火系の魔物だから、主に攻撃をアルケー、防御をウェスタ専念してくれ」
岩だらけの場所なので、馬車は通らず歩きで探すことになってた。
大きな岩を避けながら進んでいくと、三匹のファイヤーウルフがいた。
見た目は普通の狼だが、炎を操るので注意が必要だ。
「翔殿、拙者と茜、そして翔殿で一匹ずつ倒すなり」
「分かりました。でもそのメイド服で戦えるのですか」
「問題ないなり」
そう言うと、神楽と茜はファイヤーウルフに向かって走り出した。
僕も遅れないよう直ぐに後を追った。
ファイヤーウルフのレベルは30、油断しない限り傷を負うこともなく簡単に倒せるだろう。
僕は真ん中のファイヤーウルフに的を絞り、剣を構え突っ込んでいく。
ファイヤーウルフも途中でこちらに気付き、口から僕目掛けて炎の球を三つ打ち出す。
そんなに早くなかった為、簡単に避けることが出来た。
僕は、飛び出した勢いのまま、ファイヤーウルフを口から横一線、後ろまで切り裂いた。
『バフン』という音と共にファイヤーウルフは消えて、聖霊石のみ残った。
神楽と茜も一撃で倒したようだ。
「ところで翔殿、先ほどのファイヤーウルフ、経験値はいくら入ったなり」
「え~っと、経験値が66入っているから一匹22ですね」
「それでは次はファミリーを外して、1人で一匹倒すなり」
「それは何か意味があるのでしょうか」
「やってみれば分かるなり」
暫く行くとファイヤーウルフが二匹居たので、僕と神楽で一匹ずつ倒した。
「倒しましたよ、神楽」
「経験値はいくら入ったなり」
「一匹だけだったから経験値22入ってます」
「なるほどなり」
「何か分かったのですか」
「ウム、翔殿はパーティーを組むともらえる経験値は少なくなると思っていたみたいなりが、実際は変わってないということなり」
「でも実際、なかなかレベル上がらなくなりましたが」
「それはレベルが上がって、次のレベルまでの経験値が多くなった所為なり」
「先ほどのファイヤーウルフ、拙者はパーティー組んだときは経験値22もらえたなり、しかしソロで戦うと経験値11しかもらえなかったなり、パーティー組むと更に下がるなり」
「ということは…」
「翔殿は、ソロでもパーティーでもデメリットはないなり。
逆にファミリーのメンバーシップはソロで戦うより、翔殿とファミリー組んで戦った方が経験値沢山入るなり」
「それなら、皆のレベル上げの為にも魔物をどんどん倒していきましょう」
僕は、マップで魔物の位置を確認しながら進んでいた。
魔物を倒していけば、そのうちフレイムゴーレムに出会えるだろうと、考えながら次の魔物のいる場所へ移動していた。





