165 隠密部隊2
街の往来の、ど真ん中で犬がそのまま二足歩行して服を着ている犬人族一人に、忍者のような格好で灰色の服を着た人達十人に取り囲まれていた。
隠密部隊のリーダーらしき人物が話しかけていた。
「大人しく投降すれば危害は加えない」
「何の冗談だ。投降しても殺されるだけじゃないか」
「我々の質問にきちんと答えたら殺しはしない」
「お前達の所為で仲間が何人殺されたと思っているんだ」
「我々の情報を盗もうとするからだ」
「お前達が重大な規律違反をしているからではないか、例えば…、」
「それ以上は他言無用」
「ならどうする、民衆のように前で殺すのか、ただで殺されはしないぜ」
そう言うと犬人族は、腰に付けていた剣を引き抜き構える。
それと同時に忍者達もクナイや短剣、刀などをそれぞれ構えた。
一触即発の雰囲気に辺りは包まれていた。
僕は今の内に、忍者達にマーキングをしてマップで確認出来るようにした。
隠密部隊の全員ではないだろうが、何人かにマーキングしていれば、いずれは全員繋がっていくだろうと思った。
犬人族のレベルは154、隠密部隊のリーダーらしき人が最高レベルで188、部下の最低レベルは170、
どうみてもレベル差もだけど多勢に無勢で負ける要素しか見えなかったが、犬人族は、リーダーに攻撃を仕掛けていった。
犬人族は、ステップを踏むような感じでリーダーに近づいて行ったと思ったら、次の瞬間、大きく跳ねレベルの低い忍者目掛けて剣を振り下ろすが、
横にいた忍者二人が剣を受け止め、低レベルの忍者がクナイで突き刺すが、犬人族は後ろにバク転しながら交わした。
犬人族が交わした場所に、回りから手裏剣が投げ込まれていくが、犬人族は回転しながら交わしていく。
あまりにも一方的だったので、僕は手助けしようと一歩動いた所で、神楽が僕を手で制して押し留めた。
神楽は無言で首を横に振った。
犬人族は少しずつ傷を負いながらも、何とか深手にならず逃げて、様子を伺っていたが、三人が同時攻撃して来たところで、犬人族は大きくジャンプし囲みから脱出しようとした瞬間、回りからクナイが飛んできて、そのうちの4本が体に当たり、大きく九の字に曲がりそのまま地面に激突した。
動けなくなった犬人族を隠密部隊は取り押さえ、ロープで縛っていた。
「これから、お前を連行し白状してもらう」
「そんな事が出来ると思っているのか」
「ああ、方法はいくらでもあるからな、お前の黒幕を喋ってもらうぞ」
「あ~、残念だったな」
「何、しまった!口を押さえろ」
犬人族は次の瞬間、口から血を吐きそのまま倒れた。
「しまった、口の中に毒を仕込んでいやがった」
「隊長、こいつどうしますか」
「念の為、連れて帰ろう。
指輪や持ち物に、何か残っているかも知れない」
「了解」
犬人族は引きずられるようにつれていかれる。
僕はその一部始終を見ていて怒りが込み上げてきていた。
犬人族と目があった時から、使命を全うしようと必死に頑張り、生きて帰ろうとしていた。
僕が手助けすれば、逃げる事ぐらいは出来たのでは、思わず自分と重ねてしまう。
僕1人で、隠密部隊に囲まれてしまう。
僕では勝てない、でも仲間達を逃がさないとそう考えていたら、いつの間にか剣に手を当てていた。
次の瞬間、首筋に冷たい感覚が、
「動くな」
気付いたのは、声がしてからだった。
いつの間にか隠密部隊のリーダーが僕の後ろに回りクナイを僕の首筋に当てていた。
「翔くん」
「翔様」
「翔殿」
一瞬の出来事で、皆動けずにいた。
「動くな、貴様、あの犬人族の仲間か」
「い、いや、違う」
「じゃあ、なぜ剣に手を当てている」
「僕にも分からない、ただ1人の剣士として戦ったのに、あの運び方はないだろう」
「確かに、そうだな。
しかし、仲間かどうかは疑問だな」
「僕達は、この街に初めてきたし、犬人族にあったのも初めてだ」
隠密部隊のリーダーに部下が1人近づきボソボソと何やら話していた。
そして隠密部隊のリーダーは、クナイを離し僕との距離を取った。
「この街に初めて来たことは本当らしいな。
でも間違っていることがある」
「え」
「こいつは犬人族じゃなく、狼人族だ」
「狼?」
「それに1人の剣士として、きちんと扱うべきだったな、すまぬ
疑いが晴れた訳ではないが、今回は見逃してやる。
しかし、次は連行するからな」
隠密部隊は、スッと消えていった。
その瞬間、僕はドッと冷や汗が一気に出たような気がした。
後で皆に苦情を言われたが、あまりの出来事で耳に全く残らなかった。
ただ1つ言えることは、もっと強くならないといけないということだけだった。





