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14 初狩り

僕達は鬱蒼うっそうと生い茂った森の中を進んでいた。

なるべく迷子にならないように、城壁の見える範囲で歩いていたが、時折、障害物により大きく迂回しなければならなかったので、方向を見失わないように気をつけなければならなかった。

周りは高く大きく育った木の所為で、地面までほとんど日の光は地面まで通さず、木々の葉から洩れる日の光が筋のように通り、周りを明るく照らし、とても幻想的に見えた。

道らしき道はなく獣道だろうか?、それとも誰かが通った跡だろうか?、草が生えてない場所、草が倒されたり、刈られていたり、そんな通りやすくしている場所を選んで進んでいった。

男子4人で前を歩き、女子2人は少し離れて付いて来ている。

異世界とは思えないほど、日の光も暖かく景色も普段と変わらない新緑の森の中をまるでピクニック気分で歩いていた。

狩りという事で森へ来ているのだが、果たして僕に獲物を狩る事が出来るかどうかという問題が出てくる。

獲物を見つけ捕まえる以前に、獲物を殺す事が出来るだろうか?

普通の人は普段そんな事はしないだろう。

そういった仕事に付いているか、猟師かくらいしか動物を殺す事なんてないだろう。

その事について隼人に相談すると、


「慣れだよ、慣れ。

弱肉強食だから動物を殺して僕達の食料にしないと僕達が飢えてしまう。

それに逆に動物やモンスターに襲われて食べられるも知れないし、生きる為には殺るか殺られるかの二択しかないだろう。

それに今まで牛や豚、魚なんか散々食って来ただろう。

それは誰かが殺したから食べられるのであって、今は待っていても誰も食料を持って来てはくれない。

自分の食べる物は自分で手に入れないと、そうすれば他の者から命を貰っていると実感が湧いて来るだろう」


確かに正論だと思う。逃げるという手も有ると思うけど、生きる為には仕方ない事だと割り切るしかないだろう。

でも実際、獲物の命を絶つ時にならないとどうなるのかは自分でも分からなかった。

皆はどうだろうか?

僕だけ悩んでいるのだろうか?

聞くに聞けずに僕は心の奥底へと押し込んだ。


「それにしてもどうして僕、武器が杖なんだろう」


僕は何故、杖を渡されたのか疑問に思っていた。


「翔、それはお前がいきなり精霊魔法使ったからじゃないのか?

このパーティー魔法職いないから丁度いいけど、この際、魔法職目指して見ないか?」


「まぁ、僕には何の取りがないから、何でもいいんだけどな」


「翔くん、そんなにいじけなくてもいいんじゃないの」


「そうそう、逆に言えば何にでもなれるということだし、現に精霊だって扱えてるし」


「それじゃあ、将来の職業は精霊使いで決まりだな。

ところで、精霊はお前の周りにいるのか?」


いやいや、勝手に僕の職業決めないで欲しい。

僕だって、なりたい職業はあるんだから、でも何の取り柄もなければ職業につけるだけでもありがたいかも知れない。

ああ、僕も勇者になりたかった。

だって憧れの職業だし、目立ちたい、頼りにされたい、一度は誰もがそう思うだろう。


「ああ、エアリエルは僕の肩に乗っている」


「いいな、俺もペット欲しい~。

それにしてもこのパーティー、美女ばかりで嬉しいな」


僕は振り返り後ろを見て確認する。

振り返った瞬間、沙羅と目と目があってしまった。


「な~に、翔くん?」


「い、いや、な、何でもないよ」


ついつい、どもってしまう。

確かに美人ばかりだ、セレナさん達エルフはもっと綺麗だけど、人族だって負けてないと僕は思う。

隼人が歩きながら話を始めた。


「翔のレベルは5、皆は3だけどレベル3になると、サーチというスキルが覚えられるんだけど、取得出来るスキルはきちんと確認しているか?

これは敵をいち早く発見しやすくするから、覚えておいた方がいいと思う。

2ポイント必要だけど俺はお薦めする。

取っておいて損はないだろう。

レベル5でスキル採集は2ポイント必要、これは薬草とか判別出来るようになるから、買うよりかは見つけた方がお金を使わないで済むから必要だな。

レベルアップ毎に、だいたい1~2ポイント貯まるからポイントが貯まれば取得出来るはず。

あとはレベル10で冒険者に、レベル20でやっとそれぞれの職業の下級職につけるから」


早速さっそくだから僕はメニューを開きスキルに振り分けてみる。

『メニューを開きスキルの欄で...、取得っと、そしてサーチと採集...あれ~?』

取得するのに1ポイントずつしか必要ない。

他の人はどうだろうと思い聞いてみた。


「いや、皆、サーチも採集も2ポイント必要になっている。

翔だけが1ポイントっておかしいって。

精霊魔法も使えるし、翔だけが特別なんじゃないの?」


確かにそう言われると確かにそうだ。

何にも取り柄が無かったから、これが取り柄になっているのだろか?

そんな事考えながら歩いていたら、先の方に山羊やぎみたいな動物がいた。


「あれは、山羊か?」


「山羊みたいだね」


「体は大きいし角も大きい、角の数も多くないか」


「そうだね、でも見た目は山羊だよね」


「この世界にも、山羊がいるんだね」


「捕まえるか?」


「よし、捕まえよう!」


「翔と紗耶香は左側からまわって、祐太と沙羅は右側から、俺と海斗で正面から追い込むから」


「了解」


みんながそれぞれ動き出す。

山羊らしき動物の大きさは、普段見ている大人のウシの大きさと変わらないくらい、見た目山羊なのだが、二本長く伸びた角は一メートルはあるだろうか、それと頭の上に十センチほどの角が三本生えていた。

かなりの大物だ。

あの鋭い角で攻撃されたら、僕の体に穴が空いて確実に死んでしまうだろう。

あの長い角を見るだけでかなり恐怖心を煽る。

攻撃しないといけないのは分かっている。

だけど自分も攻撃されたら痛い思いもするし、血が出て死ぬかも知れない。

それならば先に仕掛けるべきか、僕は獲物に攻撃して殺す事が出来るのか、とても不安だった。

殺るか殺られるか、その言葉を思いだし僕は右手に持つ杖に力を込めた。

そしてそれぞれの位置に付いたことを確認すると、隼人と海斗が動き出す。

山羊は最初のうち気付いてないようだったが、50メートル付近まで近づいたら、山羊が隼人と海斗の方に警戒し初め、そして10メートル付近まで近いたら、山羊が反対方向へと逃げ始めた。

意外と山羊は臆病なようで攻撃をするより逃げる方を選んだようだ。

だが、逃げた方向には祐太と沙羅がいる。


「祐太、沙羅、そっちに行ったぞ!」


「あっ!」


咄嗟とっさに、山羊は気付いて方向転換する。

だが、方向転換した先には僕達がいた。

これなら殺さなくてもいいはず、とにかく捕まえる事が出来れば...。

通り道をはさむように、僕と紗耶香は木の陰に隠れていた。

運良く僕達の隠れていた木の間を通り山羊が通過する直前、捕まえようと2人でお互いタイミングを見計らって飛び出したのが、山羊の速さについていけず、明らかに出遅れてしまった。

そして山羊がそのまま走り去ろうとした瞬間、


「私が、居ないとダメね~」


と言う声と同時に、エアリエルが風のカーテンで行く手をはばんだ。

山羊は見えない風の壁にぶつかり、頭を何回も上下に振っていた。

ぶつかった衝撃で頭が痛かったのか、それとも驚いているのか分からなかったが山羊もいきなりのことで、立ち止まっていた。

物凄い勢いで壁にぶつけたようなものだから、脳震盪のうしんとうを起こしているのかも知れない。

明らかにふらついているのが見た目で分かる。

今がチャンスと思い、すかさず僕は山羊の元へ走り寄り山羊の首を掴んで倒し押さえつけた。

そして皆が集まって来て、逃げ出そうとする山羊を押さえつける。

見た目と違い、もっと暴れて危害を加えてくるかと思ったが、山羊は捕まったら大人しくなった。

攻撃力はなく、逃げ足の速さだけが取り柄なのかもしれない。


「何、さっきの風?」


「エアリエルだよ」


「見えないから分からないけど、風の精霊って本当にいるんだ」


「ありがとうね エアリエル」


エアリエルは、腕を組みえらそうにしている。

今回は、エアリエルのおかげだし、お礼を言っとかないとな。


「ありがとう、エアリエル、助かったよ」


「いや~、照れるな~、マスターの為ですから、ウフフフ」


皆には見えないけど体をモジモジさせながら話していた。

エアリエルは意外と照れ屋さんみたいだ。


「この山羊、どうする?」


「とりあえず、ロープがあったと思うから、首をつないで生きたまま連れていこう」


「そうだね、メスみたいだから飼育したら毎日美味しいミルクが飲めるしね」


「飼うには大きすぎない?」


「その時は、可哀想だけど俺達の食料にするしかないか」


「えっ、食べるの?」


「紗耶香、それは当たり前だろう。

何の為に狩りに来ていると思っているんだ。

食料を集めないとこっちが餓死して死んでしまうんだぞ!」


「隼人、それは分かっているわよ!

ただ生きる為とはいえ、動物を殺すなんて...」


「おいおい、それは常識だろう。

お前だって牛や豚、鳥の肉なんか食べていただろう」


「それはそうだけど...、いつもは既に肉の塊になっている物を買うけど、実際に目の前で殺して食べるとなると...」


「慣れるしかないだろう。

俺だって最初は躊躇したさ、でもそれは慣れるまでだ。

慣れるといろいろ麻痺してきて何も思わなくなるから」


隼人の言うとおり、この異世界に来てしまったからには、この異世界の常識に慣れるしかない。

何でも自分で出来るようにならないと、誰も手伝ってくれない。

生きて行く為には仕方ない事だと自分に言い聞かせるしかない。

ロープで首輪を作ってしばり、山羊を歩かせる。

ロープで縛るまでは逃げようと暴れていたが、ロープで縛ると大人しくなり、ロープを引っ張るときちんと付いてきた。

観念したのか?首を縛ると大人しくなるのか分からなかったが、山羊が自分で歩いてくれるのはありがたかった。


「初の狩りは、山羊だったね」


「次は、何かなぁ?」


「次こそ本命だろう」


「ビックボアーを捕まえないと帰れないものね~」


更に森の中を山羊を連れて進んでいく。

だがビックボアーはなかなか居なかった。

食料探して、あてもなく森の中をさ迷っていた。


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