126 街の様子
朝から僕は街の様子を見て回ることにした。
行く宛もなかったので、精霊達を置いて一人で歩いていた。
道路は、綺麗に舗装され端には花が植えられ、所々にレインボーの木が並んでいた。
朝早くにもかかわらず、人の往来は多く荷馬車の数も多い。
建築途中の住宅もかなり有り、人口が多くなっていることが伺えた。
食料は足りるだろうか、窃盗や泥棒が入らないよう警備を厳重にしないと…。
考えるときりがないが、当面は資金不足だな、お金がないと何も出来ないし税金はあまり上げたくない。
いろいろ考えながら、街中を見て回った。
商店街に入ると、いい匂いがしてきた。
焼き鳥の匂いだ。
匂いに釣られ、店の中に入るとアナンタと精霊達がいた。
「あ、ご主人様も来たのですか」
「一緒に、お昼食べましよう」
「ダーリン、隣にどうぞ」
精霊達の目の前には、食べ終わった皿が何皿も積み重なりっていた。
「お金は、どうしたんだ」
「領主の付き人だから、タダでいいんだって」
「その代わり、領主によろしく言ってくれだって」
「それはダメだろう、お金はきちんと払わないと」
「だって、ご主人様…」
「ここは、僕が払うから次からタダで施しは受けないように」
「分かりました」
精霊達は少しショボくれていたが、賄賂みたいなことはさせない。
気を付けるように念を押した。
店を出て住宅街の方に歩いた。
どれも同じような建物が立ち並び、次から次に立ち上がっていく。
同じ家の方が、材料も形も同じだから大量生産には向いているかも知れないが、個性がないなと感じてしまう。
暫く歩いていると、隼人達と出会った。
「翔、何やってんだ」
「街の様子を見て回っていた」
「今から、魔獣狩りに行こうと思うけど翔も行かないか」
隼人の後ろには、潤、博、藤堂さんがいた。
「今日は、街中を見回るつもりだから、また今度」
「わかった翔、あまり一人で抱え込むなよ」
「わかってる」
親友の隼人には、僕の性格がわかってるらしく、確かにその通りだな。
街中を一周回り、支部の士爵室に戻ってきた僕は、椅子に座り考え込む。
『お金、お金、お金、どうやって資金を集めるか』
天井を見上げ、ボーッとしていたらメイドのエマさんが入ってきた。
「翔様、よろしいでしょうか」
「どうしたのですか、エマさん」
「先ほど、長老の使いの方が見えられて、直ぐに会いにくるようにと伝言されました」
「長老…」
ちょうど良かった聞きたいことが沢山あったんだよな。
この指輪のこと、これからのこと、僕は早速、長老に会う為に巨木へ向かった。





