116 水浴び
朝食を済ませ、身支度を整える。
今日中に、ハムレットまで行く予定だ。
馬車はとても乗り心地が悪かったので、街の通り沿いにあったお店で、綿が沢山詰まったクッションを人数分買い、馬車の衝撃に備えた。
今日ものんびりと馬車に揺られ街道を進んでいく。
ハムレットに向かう街道は、荷馬車が多く見かけた。
復興する為の材料なのか、木材や食品など山積みにして運んでいる。
そんな馬車達を追い抜き、僕たちの馬車は走り抜いていく。
見た目は、回りを騎士達に警護されながら中心に馬車がいるので、余程、高貴な人が乗っているように思われ、すれ違う度に馬車の中を覗こうとする人が大勢いた。
バンブーテイルからハムレットまでの街道はかなり道幅が広くなっていた、と言うよりは普通の道幅だったが、ゴブリンの大部隊が通ったので回りの木々が倒され、無理やり道が広がったという印象が強い。
お昼時になり、アナンタが、
「お腹空いた、お腹空いた、このままじゃ死んじゃう」
とワガママを言い出したので、途中小さな原っぱに小さな川が流れていた。
そこで馬車を止め、僕はお昼ご飯の準備をする事になった。
天気のよい、ぽかぽか陽気に精霊達とアナンタは水遊びを始めた。
「ご主人様~」
「ご主人様も、一緒にどうですか」
「気持ちいいですよ」
「ダーリン、は、や、く」
お腹空いたって言うから、お昼ご飯の用意しているのに、誰の為にしてると思っているだ。
そう言いたかったが言えなかった。
「今、お昼ご飯の用意してるから後で」
「手伝いますわ、ご主人」
「助かるよ、ルナ」
「いえ、メイドとして賃金貰うので当たり前です」
僕とルナは、食事の用意を急いで準備していた。
その間、隼人は暇だから、その辺りで狩りをしてくると行って森の中に入って行った。
騎士達は、木陰で座り込み雑談をしている。
空と沙羅、ラウサージュはいつの間にか、精霊達と一緒に川遊びをしていた。
女性らしく「キャッキヤッ」と笑いながら、そしてそれを川辺で座り込んで見ているエマ、まだそこまで慣れていないのか見ているだけだった。
料理の準備が整い、エルダに土でテーブルと椅子を作ってもらおうと思い呼びに行ったら、
「ご主人様も来た~」
「ダーリン早く」
「ちょ、ちょっと」
精霊達は僕の手を引っ張り、後ろから押しながら川の中に連れ込む。
「翔くん、気持ちいいよ」
そう言いながら、水をかけてくる沙羅
僕も膝まで水に浸かり、水かきの要領で軽く沙羅だけでなく、空とラウサージュに水をかけた。
そして女性達の反撃が始まった。
一斉にかけてくる水を気持ちのよいシャワーみたいに浴びていたが、精霊達が加わり痛みに変わり始めた。
だんだんと痛みが我慢できなくなり、僕は自分の魔力を精霊達の方に向けて、加減して解放する。
僕の中心1メートルの水が無くなり、その水が回りに波となって襲いかかる。
精霊達の方に向けていたが、弱い波が女性達の方にも流れ、足を取られて水の中に皆転んでいた。
精霊達の方には強い波が襲いかかる。
すべてを飲み込み流れていく。
残ったのは、アルケーだ。
水の精霊だけのことはある。
「ご主人様~、よくもやったわね」
と言いながら反撃に出る。
川の水が河口側から、幾重にも大きな波となって襲いかかってくる。
サーフィンにはもってこいの波だ。
そんな事言っている場合ではない。
逃げてもいいが、後ろには女性達がいるから逃げる訳にはいかない、波を分散する方法をとった。
魔法でいくつもの防波堤を作り、力を弱め、進路も変わるように誘導した。
大分弱くなったが、その波が襲いかかってくる。
『ザブンーー』
僕は耐えきれず、足を取られ流されてしまった。
「やった~、勝った~」
アルケーさん、何の勝負をしているのかな。
「まったく」
僕は後でアルケーには説教してやろうと考えた。
「翔くん、ずぶ濡れだ」
「アハッハ、笑えるね」
「ええ」
女性達と同じ方向に流されていたようだ。
「皆だって、ずぶ濡れじゃないか」
と女性達の姿を見ると、ずぶ濡れの為に服が体にくっつき、体のラインがよく分かる。
服が透き通り、下着の形がはっきりと浮かび上がっていた。
そしてラウサージュは、下着の形が見えていない、というか上の下着をつけていないようで、胸の形がくっきりと浮かび上がっていた。
僕は思わず見とれていた。
それに気付いたのか、女性達は胸を手で隠しながら一言
「翔くんのスケベ」
その後昼食を食べ始めた。
女性達は、少し機嫌が悪いのか一言も喋らずに黙々と食事をとっていた。
そこへ隼人が帰って来た。
「ただいま、ここの森意外といろんな動物がいて楽しかった。
猪、鹿、鳥とかいろんな物取れたぞ。
……、何か女性達、機嫌悪そうだな」
「何か言った、隼人くん」
「獲物とるだけが、自慢じゃあないわよ」
隼人が僕の後に隠れて、耳打ちする。
「えらく恐いんですが何かあったの」
「さぁ~」
僕は先ほどあったことは言わなかった。
言ったら、さらに機嫌悪くなりそうだから、今はそっとしておくか。
昼食が終わり、馬車はまた進み初める。
馬車の中は、無言のまま重い空気が漂っていた。
ハムレットまでは、まだかなりの距離がある。
早く機嫌良くならないかなと思いながら外を眺めていた。





