112 大宴会後編
一瞬で青ざめた。
そこにいたのはセレナさんだった。
捕虜なのに勝手に外へ連れ出し宴会を開いているなんて、考えたら最悪だ。
取り敢えず謝っておこう。
「すいません、すいません、すいません」
僕は必死で謝った。
するとセレナさんは、
「翔くん、私達がゴブリン部隊を必死で殲滅して、疲れた体に鞭打って、急いで来たらこの始末。謝ってすむと思うの?
謝るくらいなら私達も混ぜなさい」
「え」
「だから、私達も参加するわ」
「いえ、僕は怒られるかと」
「何言っているの、翔くん達が装置を破壊できたから、私達はハムレットを奪還出来のだから、やることやったら宴会開くの当たり前じゃないの。
だから私達も、混ざるわよ。
その料理美味しそうね。
私達の分も追加ね」
怒られると思ったが、この人達が宴会好きな事を忘れていた。
怒られなくてすんだが、カレーをまた作らないといけなくなった。
メイドさん達にも、申し訳ないが材料の買い出しと、追加のお酒と料理を注文した。
夜遅くまで宴会続き、ほとんどの人が酔いつぶれていた。
僕は料理を作るので、てんてこ舞いで疲れはてレインボーの木の下で、木を見上げてボーッとしていた
「お疲れ様、翔くん」
声をかけて来たのはセレナさんだった。
「いえ、それより勝手なことばかりしてすいません」
「何誤っているの、回りはを見てみなさい。
敵だった騎士達、貴族達も一緒に騒いでるじゃない。
普通なら睨み合って、なかなか打ち解けないはずでしょ、それなのに翔くんは蟠りを直ぐに消してくれた。
凄いと思うよ」
「僕はただミディアが哀しそうだったので、親子で何かできたらと思って…」
「結果として皆仲良くなって良かったじゃない」
「そうですね」
「それじゃ、翔くん二人で飲み直しましょう」
「まだ飲むのですか」
「まだまだよ、朝まで飲み明かすわよ」
と言ったもの、日が昇る前にはセレナさんも酔いつぶれていた。
僕は、メイドさん達と酔いつぶれた人に、寒くならないように毛布をかけて回った。
日が昇る頃には、ラウージヤ達の主力騎士団も来る予定なので、それまで仮眠することにした。
何人かは、王達が逃げたり、騎士達が反乱を起こすかもと言って警戒したが杞憂で終わった。
日が昇り、皆が朝食を食べ終わった頃、ラウージヤ達がやって来た。
「翔くん、やったな」
「僕、一人の力では出来なかったです」
「父上には、僕から伝えよう。
功労者の翔くん、望みが叶うなら何を望む」
僕は考えた。
この国をそのままにしてほしかったが、それは無理だろう。
出来れば円満解決して欲しいが、考えた挙げ句、
「出来れば、誰一人殺して欲しくない」
僕はラウージヤに伝えた。
「それは国王も」
「はい、王の座を降りても、家族で生きていけたら幸せだと思うから」
「その王が、武力集めて反乱を起こすかも知れないよ」
「見張っていればいいことだし、その時は討伐します」
「一度は情をかけろと…、まあ操られていたのも事実だし、判断は追って通達する」
「あとミディアの件なんだが、僕のファミリとして受け入れたいんだが」
「まあ、戦利品ということで、第二婦人でいいかな」
「なんでそうなる」
「いや、そういうことにしないと誰もが納得しないだろう。
敵国の王女だぞ、普通なら国王の血を根絶やしにする為、皆死刑だろうな」
「そんな…」
「悪いようにはしないから、俺に任せとけ」
ラウージヤは言う。
国内のことに口出しできる立場ではないので、ラウージヤに任せるしかないのだが、やはり国王達を逃がした方が良かったのか、僕にはわからなった。
国王と貴族達は捕縛され、一度ナーガ国へと送られる。
ミディアは、僕が取り敢えず引き取ることになった。
国王達が送られる時、見送りに来たミディアは最後の別れを惜しんでいた。
もしかしたら、もうこれで会えないかも知れない、そう思うと自分の事のように涙が溢れて来る。
馬車に乗せられ、回りをラウージヤ達騎士団が囲むように護衛する。
ミディアは馬車が見えなくなるまで手を振っていた。
セレナさん達は先に拠点へと帰って行ったが、僕は自分が壊した建物の修理を手伝ってから帰ることにした。
その間、ミディアは哀しみにくれていたが、少しずつ明るさを取り戻していた。





