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109 リベッタ再び

僕は暗闇の中で、体を光におおわれていた。

心地よい音楽に耳を傾け、すべての事を忘れ頭の中は無になり、暗闇の中をただよっていた。


人が気分よく感じている最中さなか、邪魔をする声が聞こえる


「翔殿、翔殿、起きなさい。

このまま魔人化してしまったら、貴殿は回りを滅ぼしてしまう。

仲間が待っていますよ。

精霊達、竜の子供、エルフ、皆あなたが戻って来るのを待ってますよ」


僕は、ハッと思い出した。

こんな所で、のんびりしている場合ではない、僕には帰る場所が有るんだ。

アナンタとムラサメさんは無事だろうか、早くしないとセレナさん達も危なくなる。


音楽が段々、遠退とおのき僕の回りの光が消えていく。

それと同時に僕の意識が戻って来た。

目を開けて回りを確認すると、そこには二人の人物がいた。

一人は暗闇の中、白いローブを頭からかぶり光輝いている。

顔はローブが邪魔でよく見えない、右手に木でできた杖を持ち、構えていた。

もう一人は、黒いローブをまとい、こちらも顔がよく分からない。

白いローブの人物の輝きで、黒いローブの人物が浮かび上がっているようだった。

輝きがなければ、黒いローブの人物は何処にいるか分からないだろう。

黒いローブの人物が話を始めた。


「また、お主か邪魔ばかりしおって」


「これ以上、魔人を増やす訳にいかないのでな」


「本体を持たないお主に何ができる」


「本体は無くとも、邪魔は出来るがな」


お互い牽制けんせいしあっていた。

黒いローブの人物、何処かで見たような…。


「あ、王の隣にいた参謀か」


「お前とも、また会ったな」


また会った?何処かで出会ったか思い出してみたが思い浮かばない。


「我を忘れたか」


黒いローブの人物が、顔が見えるようにフードをずらす、その顔に見覚えがあった。


「お前は、リベッタ」


黒いローブの人物は、魔法学園の副園長だったリベッタだった。

どうしてここにいるんだ、ナーガ国とイサカロ国の両方から策略をしていたのか、その為に多くの人が亡くなったというのに、許せなかった。


「お喋りはこの辺でいいだろう、出ていってもらうぞリベッタ」


そう言うと白いローブの人物は、杖をかかげ光を放つ。

三人の周りが明るくなり、まぶしさに目を開けきれなくなり、目をつむる。

次に目を開けた時には、元に戻っていた。

周りにはアナンタとムラサメ、精霊達が心配そうに、囲んで見ていた。

ゆっくりと体を起こし、周りを確認する。

周りには、多くの騎士達がその場で傷の手当てをしたり、タンカで運んだりしている光景が目につく。

そして、リベッタと白いローブの人物が対峙たいじしていた。

リベッタの策略で両国が多くの被害が出たこと怒りを感じ、僕はリベッタに向かい走り出していた。

『お前のせいで、お前のせいで』

僕の心の中は怒りしかなかった。

剣を引き抜き、切り裂こうとした時、見えない力に弾き飛ばされる。


「グホッ」


100メートル程飛ばされた挙げ句、壁に激突し衝撃で全く動けない状態だった。


「お前ごときが、我にかなうか」


アナンタ、ムラサメさん、精霊達は慌てて僕の方に駆け寄り、回復薬を飲ませてくれた。


「我が主に傷つけるとは許せん、そろそろ退散してもらうかのリベッタ」


白いローブの人物は呪文を唱え始める。

呪文はすぐに完成し発動する。

するとリベッタの後ろで黒い渦が現れ、リベッタを吸い込もうとしている、まるでブラックホールのようだった。


「これほどの力を持っていようとは、この借りはいずれ必ず」


そう言うとリベッタは渦の中に消えて行った。

僕の何倍もの魔力を持っている事が分かる。


「リベッタは何処に飛ばされたのですか」


「次元の狭間に飛ばしてやった。

いずれまた出てくるだろうが、一年後か十年後かなのかは分からない」


「ところであなたは誰なのですか」


「わしはワーレン。かつて七賢者の一人と言われた男だ。

魔力がつきそうだからまた眠らせてもらうが、これだけの魔力が使えるのは翔殿のお陰なのだ。

翔殿が蓄えてる魔力が我にも流れてくるからな。次に会うまでにもっとたくましくなっていることを祈るよ」


ワーレンは消え、指輪の中に入ったようだった。


「翔くん、やはりその指輪は賢者の指輪でござるか」


「良く分からないけど、そうみたいですね」


「凄いでござる。賢者の装備は噂は聞いたことがあったでござるが、実際見たのは初めてでござるよ」


「そうなんですか…。それより装置の破壊はどうなったんですか」


「あれを見るでござるよ」


「凄い。大きな岩でペチャンコになってる。

誰がやったんですか」


「覚えてないでござるか?

あれは翔くんがやったでござる」


「あれを僕が?」


「凄かったでござるよ」


「僕が…。それよりセレナさん達は?」


「装置を破壊したからメニューを使って連絡を取ったら、向こうも騎士達が元に戻って戦場を放棄したから、あとは魔獣達だけの烏合の衆だから時間の問題だって言っていたでござる。

任務完了でござるよ」


「良かった」


僕は今までのプレッシャーと疲れからその場に座りこんだ。


「翔くん、セレナから追加の指示がきたでござる。

イサカロ国の王を拘束せよという事でござる」


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