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その『悪役令嬢』は幸せを恋い願う  作者: 玉響なつめ


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第12話 父と娘

 公爵家に着いた時、執事長が出迎えてくれました。


「旦那様が執務室でお待ちです」


「そう。レオン、あなたはどうする?」


「……ついていきます」


「好きになさい」


 おそらくは私からの報告と、お父様が知っているであろう内容のすりあわせでしょう。

 レオンに補足してもらうようなことはないと思うけれど……。


「イザークは王城かしら?」


「さようにございます」


「お父様は王城に行かなくて良いの?」


「そちらは旦那様にご確認ください」


「……わかったわ」


 適当な軽口で誤魔化そうなどとは思っていないけれど、つい饒舌になってしまうのは緊張しているせいかしら。

 さすがにここまでの事態になって何度反省したことか!

 でもそれを理解していても、親にこの年齢になって叱られるというのは……やはり、少々落ち着かない。


(……さすがに、除籍されるとは思わないけれど)


 私はこの公爵家唯一の直系。

 たとえ跡取りに据えないとしても、後継者を産む人間であることには違いない。


 それに殿下の浮気や今回の暴挙を止められなかったことについては確かに私にも非があることだが、私だけが咎められるものでもないと知っている。


 王家も、親たちも、自身が子供たちにつけた護衛兵や学園から報告を受けているはずなのだ。

 それらを踏まえて子供たちに任せた結果……だというならば、これも親の判断ミスとも言えるのではないか、なんて。


(ただの責任転嫁ね。私らしくもない)


 もう小さな子供でもないのに、親が止めなかったから……なんて考え恥ずかしいわ。

 それにお父様は私に提案という形で声をかけていたのだから、あれはきっと私自身に気づいてほしかったのだと思うし。


(情けない娘だと、呆れてしまわれたかしら)


 お父様は厳しいけれど、私をきちんと愛し、導いてくださった。

 私もそれに応えたいと必死に努力してきたつもりだけれど、やはりまだ未熟なのだわ。


 殿下のことをどうこうなんて言えない。

 いいえ、あの方たちも私も、みぃんな(・・・・)未熟だったのよね。


 私は正論を説いた。

 だけれど殿下の望みはそこにはなくて、道理を通せと言う前にもっと私が寄り添えたら良かったのでしょうか?


「失礼いたします、旦那様。お嬢様がお帰りにございます」


「……入れ」


 扉の向こうから低い声が聞こえて肩が竦みそうになるのを必死に堪えて何でもないような顔を作る。

 それでもきっとごまかせてはいないのでしょうけれど。


「ただいま帰りましたお父様」


「よく帰った。座りなさい」


「はい」


 執務室の中にはすでにお茶のセットが用意されていました。

 私が帰ってくるのを待っていてくださったのでしょう。


 少し迷ってから、私は長椅子のまん中に腰掛けました。

 きっとお座りになるのは、私の正面でしょうから。


 お父様は執務をしている最中だったようで、私に声をかけながらも書類から目を離すことはありません。


 レオンはドアの傍に立ち、執事長は私が座ったのを確認してお茶の準備を始めました。


「待たせたな」


「いえ」


「話は大筋で報告を受けている。改めてお前の口から聞くまでもない」


 お父様は執務用の机から私の正面に座り直すと、そう言い放ちました。

 私はそれが予想外で思わず言葉が出ず、ただお父様を見つめるしかできません。


「お前はよくやった。婚約破棄は破棄でもこちらが優位に立てるよう動く。気にせず、お前はワーデンシュタイン公爵家の跡取りとして構えているように」


「は、はい。あの、イザークや殿下たちは……」


「……彼らも若気の至りということではあるが、それ相応の処分が下る。その前に陛下からお前の気持ちも聞かれることになるだろう。……これまで苦労をかけた」


「お父様……私が甘かったとお叱りになるのでは?」


 思わずそう尋ねた私に、父は薄く笑みを浮かべて首を左右に振りました。

 そして手を伸ばし、私の頭を……幼い頃のように、優しく撫でてくださったのです。


「確かにお前は甘かったのだろう。殿下に対して諦めもあり、どうにでもなってしまえばいいと自暴自棄なところもあった。だが、お前は反省しているだろう? 言葉をかけ続け、公爵令嬢としての矜持を持ち、講堂では彼らの行動を諫めながら引き継ぎをした」


「……お父様」


「反省をし、その責任をきちんと全うしようとする者を咎めようとは思わない。苦労はするだろうが、わたしもまだお前を支えていくだけの力はある。努力を怠らないように」


「は、はい!」


 これからの道は厳しいのだろう。

 それでも、お父様は私を許し、導くと仰る。


 私は、なんと幸せ者なのだろうか!


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