4.
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ステップを軋ませながら中に乗り込む。全員が腰を落ち着けると、ベルナルドは御者に合図を出した。鞭の鳴る音と共に六頭立ての馬車がゆっくりと動き出す。がらがらと車輪が石畳を回る。馬の数が多いだけあって、動きは力強く滑らかであった。
座席をやはり軋ませて身を小さくする。内側の作りは、それほど広くは無い、図体の大きな自分が入ると相当な圧迫感であった。それでも六人は乗れる代物であろう、三人掛けに二人、対面にはベルナルドが腰を下ろした。
穏やかであった空気は掻き消えている。面々に、先ほどまでの笑顔はない、全員が全員素面の、これより討ち入りにでも行くといった顔つきである。それは、店で話せない事を、これから話し合われるであろう事が容易に予見させられたからであった。
「さて、シルベスタ。辺境の勇者よ。この土地に何かが在ると察している事だとは思うが、簡単に説明をしよう」
そう言うとベルナルドは、文字通り簡潔に状況を此方に伝えた。
曰く、かつてこの地で暴れ、甚大な被害を出したと伝えられているた魔物がある事、それを土地の賢者が精霊と手を結び封じた事、ここ暫く海が荒れ、儀式官が派遣できなかった事、確認した情報ではないが、状況からして封印が破られている事。
そして、派遣された者達が戻らなかった事。
そこまで一息に説明すると、胸に込み上げる何かを堪えるような顔でベルナルドは言った。
「友よ、お前にこんなことを任せるのは心苦しいが、他に頼る者がない。どうかこの状況を終局させてくれないだろうか」
「よしてくださいベルナルド、貴方には恩が在る」
「恩など! そんなものでお前を縛りたくは無いのだよ」
不意にティタナが口を挟んだ。
「シルベスタ様は良い御友人に恵まれておりますのね」
「ああ、ティタナ殿、この男は昔からこうでしてね。私は彼を友だと思っているのに、此方を先達だからと立ててやまない」
くしゃりと顔を顔を歪ませて笑うと、ベルナルドは言った。
なんと返したらよいかわからずに、そこかしこに目を泳がせると、頬を掻いて誤魔化した。
よく舗装された道を、馬車は屋敷を目指して走る。驚くほどに振動がなかった。扉の蝶番と言い、この街は王国の中でも文化が非常に進んでいる。
同じ事を察したのか、ティタナがそっと座席を撫でて言った。
「パレテスは良い街ですね」
「他の町と比較すると、なかなかに進んでいるでしょう」
実を言うと、その男のお陰なのですよ。
堪え切れない様に唇を歪ませながら含み笑いをすると、突然此方に向けて破顔し、ベルナルドは言った。
一体何の事だ。どきりと心臓が跳ねる。そんな事を言われても、此方にはなんの覚えもない。感心したように此方を見る女の目が、ひどく居心地の悪い思いをさせる。尻の座りが悪いとはこの事か。
「ベルナルド、待ってください、俺には覚えがない」
「そうだろうな」
あっさりとした顔で言うと、一拍おいてベルナルドは続けた。
「この男の発想力は異常でしてね、昔から何か日常で不便があると、小さな声で呟くのですよ。ああしたら良いのに、こうしたら良いのに、とね」
「まあ」
「その癖に自分では一切作り出そうとしない。私は昔から面白がって何かと話題を投げていましたが、この男は損得抜きにそれに答えを返すのですよ。結果、今のパレテスがある」
皮の窓覆いを持ち上げると、ベルナルドは外に目を向けて言った。
「父の代まで、この地は他と何ら変わらぬ小さな港町でしたよ。魚を取って、干して、それを僅かに輸出する。何も無い街でした。それが、僅か六年で此処まで発展を遂げた」
「そうだったのですか」
「ええ、本当に。傑作でしたよ。何気なく蝶を捕まえて『こういう金具があれば、便利なのに』衝撃でしたね。雷を受けた様な感覚を覚えました。
言う事の一つ一つに、ああその通りだ、何故今まで誰も気が付かなかったのであろう、と思わせられるのです。
私は任期が終わり、この土地に戻ってくると、早速鍛冶屋に作らせました。他にも煉瓦や木の組み方、地面の舗装、馬車なんて物まで。お陰で主産業が乾物から、加工製品に代わりました。海路を利用して大量の原料を運び込み、製品にして他国に輸出する。外貨は街と国を潤しました」
「それはベルナルド、貴方の手腕であって」
「バカを言うなよ、シルベスタ。私にはこんなことなど思い付かなかった。お前と出会わなければ、おそらくは今頃まだ小さな以前の屋敷で魚を焼いて食っていただろう。だからな、私の方にこそ、この街にこそ、シルベスタに返しきれない恩があるのだ」
強い言葉に会話はそこで切れた。かけるべき言葉が見つからず、彼もまたそれ以上の言葉を持たなかった。
三十分程で、馬車は目的地であるパレテサッティオ家の屋敷に到着した。屋敷自体は港の北側にある。そこは小高い丘になっていた。どの建物よりも高い位置にあるので、振り返れば街が一望にできる。
城壁はなく、柵の類いはあっても僅かであった。しかも所々に門の無い道があり、防壁の意味を成していない。全体的に見れば、古い都市跡に見える。そしてそれはよく手入れがされた広い庭に続いていた。
奥の屋敷、その傍らには、背の高い、葉の密度が薄い針葉樹が疎らに生えている。ただしそれは乱雑にではなく、あくまでも視界に如何に映るかを計算された配置である様子であった。
ベルナルドについて足を進めれば、灌木が起伏の無い庭に、一見自然と生えているように植えられている。それらは絶妙な距離感で、この土地そのものの、かつ最高に美しい大地をその場に切り取ってあった。
所々にある、一見朽ちた古き都市痕跡の様な代物も、近付いてみれば最近に作られた物であることが解った。煉瓦の土にも拘っているのであろう。それぞれ産地の違う土で作られたであろうそれらは、赤茶系統ではあるが色とりどりで目を楽しませた。
そして、その庭が、そのまま港の風景に繋がっていくのだ。
不意に胸が熱くなった。腹の底から激しく、かつ熱くたぎるものがある。胸を打たれるとは、心を揺さぶられるとは、こう言うことであるのか。
確かな文化があった。美学があった。自分では関わっているという思いこそ薄いが、それでもこの街には確かに自分の記憶が根付いていた。知らない街であるのに、突然この土地が愛しく思えてきた。それは、稲妻の強さと鋭さを以て、揺れる心を力強く打ち鳴らした。この素晴らしい友を。この美しい街を大切にしなければ、守らなければ。そんな思いが込み上げて、戸惑いさえ覚える程だった。
「……良い眺めですね」
「自慢の風景だよ」
口をついた表現は月並みで、胸に満ちた感動の百分の一も表せない。いっそ歯痒かった。だがベルナルドにはそれで充分に通じた様子であった。誇りに満ちた声で、彼は言った。少しの間、言葉もなくその景色を眺めていた。温かく湿った夏の風が、海の香りに、どこか柑橘の気配を乗せてきている。
ベルナルドが、屋敷を案内すると短く言って背を向けた。
「戦う理由は見付かったか?」
「ああ、譲れないものが出来た」
ティタナの問い掛けにはっきりとそう答えた。彼女は笑って此方を見ていた。
「ああ、私もだ。この戦いは譲れない」
廊下には、幾枚もの絵画が掛けられていた。どれもこの街や、住人を描いたものであり、鮮やかな色彩が目に新しい刺激を与えてくれる。
ベルナルドは恥ずかしそうに鼻の頭を掻くと、、自分が描いたものであると言った。
ほとほと感心させられた。上手いものだ。どれも表情が生き生きとしている。目に見えた、心で感じたあるがままを、瞬間瞬間を描き止めようとしている事が感じ取れた。
「俺に絵の良し悪しは解りませんが」
褒める言葉が見つからず、簡潔に絵に向かって言った。それしか思い付かなかった。
「とても―――とても素晴らしいと思います」
「ありがとう。だがシルベスタ、これもお前の発想から出たのだ」
えっ、と声が出た。
またか、という呆れ顔でティタナが見ている。
なんでも当時、ベルナルドは記憶を鮮やかに焼き付けたいと言ったそうだ。それに対して自分は、色石や金属を粉にして、膠で練って羊皮紙に描けば良いと答えたそうだ。さっぱりと記憶がなかった。
「絵画自体は昔からこの地方にあった文化なのだが、この技術を持ち込んだところ、商家を中心に流行してね。御抱えの画家に、挙って画材を後援するようになったよ。
またそれが他所の国に爆発的に売れてね。流石にあの頃は笑いが止まらなくなったな。確かに岩絵の具は高価な代物だが、それを上回る富が際限なく流れてくる様なものだ。
御蔭でこの街は大陸東部一の芸術都市と呼ばれているよ。もっとも、エラリアは質実剛健の気風が強すぎるのか流行らない上に話も広がらないのだがね」
吟遊詩人も芸術家も、この街に来るとそれきり出て行かないのだ。そういうと、少しだけ困ったようにベルナルドは鼻の頭を掻いた。栄え過ぎても王の治世の妨げになる。そう考えて、税は要求された額よりも多く納めていると彼は言った。
道理で話を聞かない訳である。まるで別の世界に居る様な風景に、しばしの間意識を漂白された。
柔らかく甘い香りのするパンと、香りの良い茶の様なもの、新鮮な卵の焼いたものと、燻製肉の薄切り、やはり新鮮な野菜のサラダには、油と葡萄酢に塩を入れて撹拌したドレッシングがかかっている。
際限なく胃に詰め込めそうなそれらを食べた後、余り見たくないし見せたくもないが、と前おいて、ベルナルドは厳重に封印のされた一つの大きな絵の箱を、奥から引き出してきた。
「心を強く持って、それから見てほしい。これはパレテサッティオ家に伝わる絵の一つでね、今の様に鮮やかではないが、心を砕く力を持っている」
そう言うとベルナルドは持ち出された箱からその絵を引き出した。防虫効果のある薬草で染められた麻布が、絵を覆っている。彼はそれを実に嫌そうに絵掛けに立てかけると、荒い息を隠そうともせず、かつ決して直視しない様に顔を背けつつ覆いを外した。
それは赤黒い絵であった。
描かれている物は、幾つもの首持つ竜。美しい女、否、少女と言うべきか。それと、無数の骸と、それに支えられた男の姿。
血だ。
この絵は血で描かれている。何かの皮をなめし、つなぎ合わせた物に、おそらくは人血で描かれたであろう狂気の絵が存在していた。皮は薄く、それこそ薄く毛が生え残っている。
直感した。これは人間の肌だ。剥ぎ取ったそれをなめし、そこに人血で描かれた地獄絵図だ。
それだけでも恐ろしいと言うに、描かれた代物はひどく精緻かつ写実的にその光景を捉えていた。幾つもの濃さの血が、画面に濃淡だけで描かれたとは思えぬ、文字通り狂気の光景を残している。
人々が殺されていた。狂っていた。犯されて穢されて、死と言う最後の尊厳すら冒涜されていた。
地獄絵図は見慣れていると思っていた。だが、それでもなお吐き気を催す邪悪が在った。
「―――これは」
「よく、直視出来るな……私は顔を逸らしていても死にそうだよ」
それだけ言うと、ベルナルドはもう耐えられぬとばかりに布をかぶせた。何か特殊な呪でも施してあるのか。今の今まで漏れいでていた邪気が、立ちどころに封じられる。息苦しさに彼が窓を開け放つと、重い空気に触れた木の枝が立ちどころに枯れて腐れ落ちた。真っ青な顔でそれを見送ると、ベルナルドは茶の代わりを隣に控えていた家例に申しつけた。
「見苦しい所を見せたな」
「いえ、無理をなさらず」
「だが、流石だな、二人とも顔色一つ変えないとは」
流石は竜の巫女だ。死にそうな声で呟くと、ベルナルドは椅子にぐったりと腰を落ち着けた。
「早速だが、描かれた少女と男は、どうやら先の話にあった精霊と賢者であるらしい。肝心のあれは、まあ、言わずとも解るだろう?」
「ええ」
この気配には、確かに記憶があった。ウナが悪魔と化した時に感じた冒涜感、狂気、形容しがたき怖気が再び体の芯を走り抜ける。
なるほど、これは直視できない。自分達だからこそできるが、おそらく心の弱い人間であれば視界に納めた瞬間に発狂する。
「俺に任せてください、ベルナルド。俺が、この土地に平和を取り戻します」
そんな言葉が自然と口をついた。
目を閉じて、力なく彼は笑うと、済まない、頼む。と短く言った。
出発は、そのままベルナルド邸で一泊した後となった。
途中まではパレテス海兵隊の船で向かうと言う。とは言え、島が視界に入り、これは危険だと船長が察知した時点で艀を下ろし、そこからは二人で向かう事となった。
後二km程か。まだしばらく距離はあるが、雲行きが怪しくなってきている。空の色が、露骨に狂っているのだ。申し訳ありませんが、と言うと、船長は即座に艀を下ろした。
判断を責めるつもりはない。此処から先、人間にはあまりにも荷が重い。
「ヒュドラか」
櫂を四本受け取ると、ある程度の距離から二人がかりで一気に漕いだ。この方が到着までの時間を短くできる。そんな中で、ティタナがしきりと首をかしげていた。
「どうした」
「いや、結構長く生きている積りだが、そんな事があったとは知らなかったな」
「ほお?」
「ただ、よく喧嘩していた精霊王が立て続けに居なくなった時期があってね。これはひょっとすると、そう言う事だったのかな、とさ」
「成程な」
「うむ」
まさかとは思うけどな。そう言うと、彼女は一度島の方を振り返った。
「そろそろ岩場に着くぞ、後三十秒、勢いを殺そう」
「心得た」
同じく振り返って、距離を確認する。海面の色からして暗礁はなさそうであった。勢いを殺しながら、ゆっくりと接岸する。手近な岩にもやいを施すと、装備をひっからげて地に足を付けた。
ぞ、と、怖気が立った。弾かれたように足元を見る。何か、生き物のはらわたでも踏んだのではないかと思わせる異様な感触。だが、そこにあるのはただの岩で―――
「うわ!」
やはり降り立ったティタナが、素っ頓狂な声を上げた。
なるほど。この島は、おかしい。
剣を抜いた。隣の相方が目を見開く、口が開かれたが、後に回したらしい。きゅっと引き結ぶと、彼方の山を睨みつける。
「気を付けよう、これ、きっと島なんて規模じゃない」
「どういう事だ?」
確信は無いが、と小さくつぶやくと、彼女は足を動かす事を促した。どうやら目で確かめた方が早いらしい。
答えは三十歩も行かないうちに出た。
呪詛だ。
無限とも思われる、狂気を誘う呪詛が空間に漂っている。まるで水の中を行くように、呪詛の中を歩まねばならないのであった。
「……なるほど、これでは帰って来られない訳だ」
「―――他殺死体、か」
腐乱死体が幾つか途中に落ちている。遺品をと思い、幾つか手頃な物を袋に詰めた。どれも無残に引き裂かれていた、が、食われた様子は無い。獣が寄りつかない程に、それは呪詛で汚染されていた。虫すら寄り付かない様子であった。
更に足を進める。すると、朽ちた祠らしき建築物が、見えて来た。
「これが、ベルナルドの言っていた封印か?」
「その様だな。まて、何か聞こえる―――」
―――ぐん ねる くす あい あい きたり ぐるい ぐんとぅ いあ いあ れうぃえ れうぃえ
―――ぐん ねる くす あい あい まきり なふる ぐんとぅ いあ いあ れうぃえ れうぃえ
「ふん、お出ましか」
「悪魔信仰、って感じじゃあないな」
ざわざわと肌が粟立ち、それが細波の如く全身を巡った。いつしか感じていた不気味さは、焼き尽くす様な怒りに変化を遂げている。遍く全てを微塵にせんと、腹の底から気合を込めて周囲を見渡した。
目だ。
岩の陰から、木の陰から。
無数の血走った眼が此方を覗いている。
指だ。
不気味にはいずる芋虫じみた、赤銅色の漁師の指が、爪が剥げるのも構わず岩肌や樹皮を掻きむしっている。
がりぎりがりがりぎり。
表情が自然と獣の威嚇が如き笑みを形作った。あまりのおぞましさに、あまりの理解しえぬ相手に、自然と殺気が漏れ出でる。
不意に女の声が聞こえた。
それはそれは美しい声である。声は啼いていた。苦痛と快楽に喘ぐ、淫らで官能的でありながら堕ちた声であった。絶望に満たされていた。無限に続く真におぞましい境遇から決して脱出できない事を知り、その上で発狂する事も出来ず正気で狂わせられ続ける事を理解させられ、事実解放される事無く犯され冒涜され続けている事が解る喘ぎ声であった。
訝しげに寄せられたティタナの眉が、次いで火花を散らして鱗に変わった。激烈な怒りが彼女の体を満たしている。
―――ぐん ねる くす あい あい きたり ぐるい ぐんとぅ いあ いあ れうぃえ れうぃえ
―――ぐん ねる くす あい あい まきり なふる ぐんとぅ いあ いあ れうぃえ れうぃえ
今やその声に唱和するかの様に、意味の解らない祝詞があらゆる方向から聞こえてくる。
背中を合わせる様に立った、やる事は決まっている。それは至極単純で、簡潔で清潔を呼ぶものであった。
「シルベスタ」
「ああ」
「火、吐く、手加減しない」
「ああ」
「掴まれ、飛ぶ」
「ああ―――やれ!」
肩に手をかけた。一瞬後には空中高く飛んでいる。
「“雷挺よ―――」
イリ・クトロンニク・コロマイディズ・オ・ティターニアが吼える。
制御だけ考えて、ひたすらに霊素を集めた。紫色の妖しい雲を押しのけて、純粋で高潔な黒雲が立ちどころに立ち昇る。
空間の霊素が凝集する。
魔法陣はあくまでも極大、そこからほとばしる余波が、青から朱金へ、朱金から黄金へと圧力を高めて行く。
掲げた剣を、満ちた力と撃ち落とす―――!
「―――いざ、我が敵を討て”!」
音を超える音が、光を超える光が島を蒸発させる。爆発などと言う単位ではない、文字通り触れた端から霊素に分解する規模の太さで雷が島を撃つ。
周囲の海水が一瞬で消え、空間に巨大な霊素だまりが現出する。
「―――な」
その中で見えた。
視界を焼き尽くす黄金の光の中で確かに。
島の規模よりもまだ大きく、今まさに目覚めんとしていた邪神の姿が。
常識を犯す超常の障壁で、雷を無効化した敵の姿が。
「ティタナ、やれ!」
だが此処からだ。
億の雷を束ねてまだ足りず、兆の雷を束ねて呼び水とす。
空間霊素を全て飲み込み、全てを熱量に変えた地上の太陽が顕現する。
今度こそ何もかもが消えた。
真っ白になった視界の中で、確信していた。
此処からが、本番だ。




