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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第3幕 新しい生活への物怖じ
47/57

第41話 空も飛べる!……という名の勇気

こんばんは。

今回で第3幕の終了となります。

まとめのお話になりますが、まとまっておりません(ぇー)

どうしてこうなった!? な第3幕最終話をどうぞ~。



「『四方旋風』!」


 グリーンの声が聞こえてすぐに、ボクたちを包み込むように強風が巻き上がり、砂埃を振り払う。と、大きな鳥型の『ナニカ』がこちらに向かって急旋回するのが見えた。


「『ブラック・チェーン』!」


 ボクの足元からだけじゃない。鳥型の『ナニカ』の影からもチェーンを出して、縛り付けようと試みる。

 地面から引っ張った形になったからか、つんのめった形で『ナニカ』が地面に激突しそうになって、急旋回。ブチブチと衝撃が来る。衝撃が重い。


「くぅ……重い……。やっぱりこれ無……ムリぃ……」


 必死に引っ張ろうとしてみたけど、向こうのほうが強い。


「なにボーっとしてるの!? 捕まえてる間に攻撃してよ! もう! さらに追加、『ブラック・チェーン』!」


「え……? ああそうかっ! みんな攻撃を!」


 追加した『ブラック・チェーン』が縛り上げて、さらにみんなで一斉攻撃、風の刃とか雷の玉とか色々もうメチャクチャ飛びまくる。

 これって見事なフルボッコだよね。

 あ、軽口をたたいてるように見えますが、ただいま絶讃(ぜっさん)綱引き中。口でものを言えない程度にはがんばってます。


「コノ、小シャクナ奴ラメ……ヌァ!? ゲホッ!?」


 なんだか砂埃とかも激しくて良く見えないけど、ダメージは入ってるみたい?


「調子ニ乗リオッテ!」


「え? な……なに?」


 いきなりぶわって強風が来て、ぶちんぶちんと鎖がちぎれ始めた。

 見ると、もう『ナニカ』が飛び上がっていて、すごい風で吹っ飛ばされそうになったから、慌てて足元から伸びる鎖にしがみついた。


「きゃあ!?」


「うわっ」


 何人かの声が聞こえたけど、声が遠ざかっていくってことは吹っ飛ばされたのかな?


「後ハオ前ダケダ、黒イ小娘」


「はぇ?」


 風が止んだから、目を開けて周りを見る。

 この場に立ってたのはボクだけだった。


「え? ちょっと……みんなは? ねえ? ちょっと……」


 後ろを見ると校舎の方まで飛んでったみたい……。全速力でこっちに向かってみんな走って来てるようだ。


「コノ鎖サエ断チ切レバ、我ハ自由ノ身。覚悟セヨ!」


「え? うっく……?」


 もう、ボクの足元だけになった鎖が思いっきり引っ張られる。なんとか切れないようにがんば――


―― ボコッ


「はえ? ええ~~~~~~~~~~!!!!?」


 なんということでしょう。引っ張られすぎて地面がボクの影ごと削れて持ち上げられてしまいました。って冷静に考えてる場合じゃないよ!?


「ちょっ、あぅ……ひにゃあああああああああああ!!?」


 気分はジェットコースター、持ち上げられてそのままぶんぶん振り回されてって……どうなって……おぇ……気持ち悪っ……。


「ホラホラ、ドウシタ小娘? 抵抗セヌノカ?」


 抵抗っていうか、むしろしがみついてるのがやっと――。


「あれ……?」


 ふっとした瞬間に、ボクの手から鎖が消えていた。


「あれ? どこ? 鎖ってええええええええええええええええ!?」


 ああ、そっか、影がなくなったら鎖も消えるんだっけ……うん。振り回されて影ができてた地面も吹き飛んだのね……って勢いつき過ぎ! 勢いつき過ぎだよぉ!? 追い打ちで強風までオマケに付けるなんて反則だよぉ!?


「ひっ、きっ、きゃあああああああああああああああああああああああ――」


 ボクの身体、放り出されてどんどん上空にすっ飛んでく。

 下を見ると……ああ、見ないほうが良かった……。学校の校舎は3階建て、それの遥か上まで飛ばされてる。


「ひぐっぅ……」


 体の中がひっくり返りそうな感覚の後、ゆっくりと落下していく。


「フハハハ……ソノママ地面ニ叩キツケラレルガイイ!」


 そんな……このまま落ちたらボクどうなっちゃうの? もしかして……死んじゃう?


「やだっ、やだやだやだぁ!!」


――『しかたないですね』――。


「え~……? だ~……れ~……?」


 だれかの声が聞こえた瞬間、落ちる速度、感じる風の速さ、そしてボクの声、なにもかもがスローモーションになった。

 どうなってるの?


――『あなたに死なれては困ります。ひとつだけ、助力さしあげましょう』――。


 え? この声……って夢の中の……。


――『話している暇は有りませんよ? 今も落ち続けていますからね』――。


 そうだった、ボク落ちてたんだったよ! どうしよどうしよ! ボクどうしたら良いの!?


――『落ち着いて、そしてたったひとつ口にすれば良いのです。飛べ、と』――


 はあ!? ちょっと待って!? ボクが飛ぶの!? ジェイクさんが言ってたじゃないか! 飛ぶには風属性の魔力が必要だって!


――『魔法はイメージの結晶。信じて、自分自身を』――。


 自分を、ボクを信じる。


――『大丈夫です。あなたの心の(カセ)のひとつは外れました。今なら空も飛べます。勇気を持って』――。


 空も飛べる。ボクは空も飛べる……。

 迫り来る地面に向かって、ボクは大きく息を吸って――。


「空も飛べる!」


 さけんだ。


「きゃあ!?」


 目も開けられない砂ぼこり、思わず目をつむって身構える。



……


………


…………



「なんともない……?」


 ひどい落下による身体の重みも感じなければ、地面に叩きつけられたような衝撃もない……。


「ボク、どうなったの?」


 目を開けると、地面すれすれで、ボクの身体が浮いてた。

 目の前の地面を人差し指でつつく、と確かに地面のザラッとした感じが確かめられた。


「ボク……浮いてるんだ……」


 もしかして、自由に飛べるとか? 


「と、飛べ……」


 静かに口にすると、ふわりと身体が浮かび上がった。


「ナ、ナンダト……? ドウナッテイルノダ? 確カニ純粋ナ闇属性ダッタハズ……。ソレガドウシテ……」


 なんだか良くわからないけど、『ナニカ』はすごいどうようしてる。もしかしてチャンス?


二重三重(ふたえみえ)(いまし)めよ、()が前に仇為(あだな)す者。『ダーク・チェーン』!」


「ヌァア!?」


 強化詠唱(きょうかえいしょう)で『ダーク・チェーン』を放って、『ナニカ』を縛り上げる。


「マタカ!? コンナモノ! スグニ引キチギッテ――」


――『()が身を地より解き放て、風(まと)いし闇の意思。『黒翼』 』――。

()が身を地より解き放て、風(まと)いし闇の意思。『黒翼』」


 背中から、少しだけ小さな風が巻き起こり、ボクの体がふわりと浮かび上がった。

 後ろを見ると、ボクの背中から黒い大きな翼が、(かす)かに緑色の魔力を(まと)っていた。

 今なら分かる、これはボクの翼。ボクが思い浮かべたとおりに飛んでくれる。


「運んで、ボクの翼! ――うわぁっ!?」


 きりもみ状に、一気に『ナニカ』の真上まで飛び上がった。


「ナンダト!?」


「うわ~……はや~い……」


 っと、違った、攻撃しないと!

 驚愕の声を上げる『ナニカ』が顔を上げたところで杖を振る。


「開け! 世界の裂け目! 『ブラックホール』! てぇい!」


 目の前に作った、黒い円盤を、そのまま『ナニカ』めがけてぶん投げる。と、すとーんときれいにナニカの体を輪切りにするようにはまった。


「ングゥォオオオオ!!? ナンダコレハ……!? 我ガ魔力ガ吸イ取ラレテイク……」


 ギリギリと音を立てて、『ナニカ』がどんどん小さくなっていく……。

 あ~……オオカミさんと同じ感じだねえ……。


「っと、見てたらいけないんだったよ……。とどめ刺さなくちゃ。『ブラック・シックル』」


 杖を大鎌に変えて、一気に振りかぶる。


「クソォ! コノ我ガ! コンナ小娘ナンゾニ――」


「てぇい!」


 気合一閃、首元目掛けて急降下、首に引っ掛けるようにして、鎌を振り抜く!

 ズバン、という鋭い音がした後、ドサリと地面になにかが落ちた音がする。

 振り向くと、『ナニカ』の首が地面に落ちていた。


「有リ得ヌ、コノ我ガ……コノ我ガ……」


「ひぅっ……」


 こっちをにらみながら(うら)み節とかやめてよね……。ボクだってさっき死にそうになったんだしさあ……。


忌々(イマイマ)シイ小娘メ……。次ニ()ッタ時ハ死ノ覚悟ヲシテオケヨ……。我ハ何度デモ(ヨミ)ガエルノダ……」


 え~……ちょっと待って、それ以前も言われた覚えが……。どうしてボスキャラってこんなワンパターンな言葉を去りぎわに残していくの……? もうウンザリだよぉ……。


「明! 大丈夫か!?」


 振り向いたらジェイクさんが空を飛んでボクの後ろにいた。


「はあ、なんとか…‥。でもコレどうしましょう?」


 とりあえず指さして聞いてみる。


「コレトハ何ダ! コレトハ!」


 『ナニカ』が怒って首だけでジタバタし始めた。こんな状態でも元気だなあ……。


「私に任せろ、《開門(ゲートオープン)》」


 ジェイクさんが呪文を唱えると、黒い穴みたいなのが地面に開いて『ナニカ』の魔力をどんどん吸い込んでいく。ぐいぐいと吸い込んで行き、やがてきれいさっぱり消えてなくなった。


「おわった~……」


 疲れた、もう疲れた。ボク……もう良いよね……。

 息を大きくはいた瞬間、ボクの変身が解除された。魔力切れ……かな? すごく眠い……。


「ふぁ~~~~……」


「ん? 明!? どうした明!?」


 ボクの口から気が抜けたような声が出て――。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



「んにゅ? お母さん?」


 目を開けたら、お母さんがのぞきこんでた。そのとなりには拓海。ううん、みんながボクを心配そうに見つめていた。


「あれ? みんな……おはよ~……ございます?」


 なぜか知らないけど、ボクの第一声がそれだった。



「ぷっ……なにそれ? ブラックらしいわ」


 レッドが心配してソンしたとでも言いたげな様子で笑い始めた。


「本当……あれだけの戦いをしておいてほとんど無傷というのは大したものです」


 ブルーがあきれたと言わんばかりに盛大にため息をついた。


「まったく、心配したんやで?」


「そうそう~……さすがにわたしも心配しちゃったよ~」


「ごめん、みんな。心配してくれてありがと~」


 ボクも、みんなと笑って会話ができてとってもうれしい。うれしいよ……。


「あらあら、妹ちゃん? どうして涙なんて……。ああ、そっか怖くてしかたなかったんだね? 良いんだよ? お姉さまの胸に飛び込んで――もっ!?」


「やめなさい! これだからあなたはっ!」


 いきなり抱きついてきたフレーベルさんを、ミラさんがツッコミよろしく、殴り飛ばした。

 みんな笑顔で……良かった。


「ア~キ~ラ~?」


 ごめんなさい! ひとりを(のぞ)いては! でした……。


「あの……ごめんね? 拓海、だから……許してください?」


 小さく震えながら、手を合わせて謝った。


「許さねえ! 今回は許さないぞ!」


「ひぇ!?」


 すごい怖い顔でにらまれて、ボクは身を小さくした。

 お説教モードにスイッチが入った親友の、盛大なお説教タイムに戦々恐々(せんせんきょうきょう)とするのだった。




                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『空も飛べる』の回でした。

物怖じから勇気へと変わった第3幕。明の魔法少女としての成長を書いて来ました。

次、第4幕からは明の人間面での成長のお話に移っていくと思います。

どうぞよろしくお願いします(ぺっこり


っと、そうでした。

次回はいつもどおり、幕間でした。

ただ今アンケートを取っていますので、興味が有る方は投票よろしくお願いします。

幕間が終了した後、胡蝶の夢を通して第4幕に移りたいと思っています。

それでは改めまして、今後ともばっくわ~どまじっくをよろしくお願いいたします(ぺっこり



第2回ばっくわ~どまじっく番外編のアンケート

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