第40話 始末書と修繕費!……という名の物怖じ
こんばんは。
4月に入ったはずなのにもう5月病になった気分。
ちょっと学校が遅めの春休みなので小説をちょっとガリガリ書きます。
という訳で、今回は酷いサブタイトルですが、大きな意味はありません。
それではどうぞ~。
「あの……? ボク、高校一年生だよ? なんで? どうしてボクが12歳とかになるの?」
「12歳だって言ったのは他でもない、キミだろう? 明」
「ふぇ? ボク、そんなこと言ったっけ?」
「昨日自分で言ってただろう? 覚えていないのかね?」
「まったく~? て言うか、なんでボクはそんなこと言わなくちゃいけないの?」
「ダメよ、ジェイク。多分かなり高い熱を出してたから、そのせいで記憶があいまいなんだわ」
「そう言えばそうだったな……。と、こっちの作業は終了だ。封印の腕輪と併用すればこのままでもしばらくは持つだろう」
左腕を持ち上げると黒いのが5つ、銀色のがひとつの合計6つ通ってた。
「壊れた腕輪、このままだとどんどん劣化していっちゃうから、新しいのが届くまで預かっておくわね?」
「うん、ミラさんとフレーベルさんは? 外で戦ってるの?」
「どうして? 気にすることないわよ? 明ちゃんはここでゆっくり休んでれば――」
「ううん、ボク……戦う……」
「なに言ってるの!?」
「そうだぞ? そんな身体でなにができるんだよ!?」
「でも……ボク分かってるから」
少しだけ調子が戻ってきて、さっきから寒いくらいに首の後の方がチリチリしてる。
「多分外にはいっぱいいるんだよ……。ボクのせいで……」
身体を起こして、軽バンの外を見ると、鳥の形をした『ナニカ』が空をいっぱい飛んでた。
「仮にそうだとしても! 今のあなたの調子じゃムリよ!」
「ううん、だいじょ~ぶ。ボク、少しだけ分かったんだ、自分の力の使い方」
「力の使い方? でも、今の明の魔力量じゃ危ないわよ」
「それも、なんとかなるよ」
「ちょっと待てよ! 俺は反対だ! お前が行くことないんだろ? だったらここにいたらいいじゃないか!」
拓海の言うことはもっともだけど、でも今回は色々とボクが要因になってることもあるから……。
「ごめんね? 拓海。帰ってきてから怒られるから、だからここで待ってて」
軽く体を捻って、軽バンの外に出る。
「……あ……れ?」
立った瞬間にちょっとだけ立ちくらみが……。
「アキラ!」
慌てて拓海が軽バンの中からボクを支えるようにして出てきた。
「だからムチャするなって言ってるだろ!?」
「てへへ……ちょっと立ちくらみしただけだよ? 寝過ぎただけだから気にしないで」
「明ちゃん? 本当に大丈夫なの?」
「うん、お母さん。ちょっと行ってくるね? 拓海をよろしく」
「はぁ~……どうしてこんなにガンコになっちゃったのかしら? 心配だからジェイク、ついて行ってあげて」
「分かった。いざとなったら私が守ろう」
「という訳だから拓海、行かせて? ね?」
「分かった……。その代わり、帰ってきたら説教だから覚えてろよ?」
「は~い……」
拓海の説教って長いからキライなんだけどなぁ……。
拓海がボクから腕を離してくれたのを確認して、左手の腕輪を確かめる。銀色の腕輪にはまった黒い石。そこに少しだけ魔力を込める。
「『ライトアップ』!」
足元から、黒い光が出て、一瞬でボクの服が変わる。変身するだけの魔力は残ってたらしい。それでも少しだけ、服の輪郭がボヤけてる。
「明、やっぱりムチャなんじゃ……止めておいたほうが良くない?」
心配そうな顔をして、お母さんがボクを見る。それに小さく首を振る。
「『リデュース』!」
銀色の腕輪の上に小さく黒い円盤が現れた。いつもボクが『ブラックホール』として使っているもの、それの小さなバージョン。そこからボクに魔力が流れこんでくる。
それと同じくして、軽バンを包んでた結界の中に充満していたボクの魔力もボクの中に戻ってきてるみたいだ。
「いたっ……」
いきなり大きく吸い出し過ぎたみたい。小さく痛みを感じた。ちょっと魔力を吸収する速度を緩めなくちゃ。
「明!? キミは一体なにをしているのだ……」
「かんたんだよ? 今まで不思議だったんだよ、吸い取った『ナニカ』はどうなってるんだろう? って。答えはコレ……。吸い取った『ナニカ』は純粋な魔力に還元されてるんだよ。そしてボクはそれを自分に吸収して使う」
「そんなバカなことが……できるわけが……」
「ううん、そんなことないよ? こうしてできてるもん。これが……魔力同化の効果のひとつなんだよ」
『リデュース』を解除して、目を閉じて確認する。うん、ボクの中にいつも以上に魔力が存在してるのが分かる……。
「なんとも器用なものだ……」
「あきれてものも言えないデタラメっぷりね~」
「それじゃあ、お母さん、拓海、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
「ケガしたら承知しないからな!」
ふたりの声を背に受けて、ボクは『ナニカ』がたくさんいる気配がする高根中学校の校庭に向かって走りだした。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
「うわ~……コレはすごいねえ……」
校庭の上? 上空? が真っ黒。なんひきいるんだろ?
「――っと、『ブラック・シックル』」
なんひきかがこっちに向かって方向転換、急降下してきた。
「明! 来るぞ!」
「分かってる! 『ダーク・チェーン』」
ブーツのヒールを地面に打ち付けると、影から大量の鎖が飛び出て、周囲の『ナニカ』をつないで引っ張る。
「『ブラックホール』」
そのまま鎖の起動に合わせて全部まるごと吸い込んだ。10ぴき以上いたのかな?
「大量? っていうか意外とあっけない?」
「むぅ‥…私に聞かれても……な……」
そんな会話をしている最中もなんかわらわら飛んできてるし……。え~っと……こういう時は……。
「え~っと、こんなこと、できる……のかな?」
イメージ、魔法はイメージなんだよ。さっき見たのを思い出してイメージだよ。
自分に言い聞かせて、魔法の名前を口にする。
「『ネイルド・レイン』」
ドツドツドツっと小さい音が連続でして、空から『ナニカ』が落ちてきた。うん、落ちてきた。落ちてきたんだけど。
「うわ~……これはひどい……」
鳥型の『ナニカ』は全部『串刺し』の状態で、何十ぴきも地面に刺さってジタバタしてた。
「明……これはヒドイと思うぞ? 色々と……。目の前が針地獄になっとるじゃないか……」
『シャドー・バインド』じゃあ動きを止めるだけで、空中の『ナニカ』が落ちてくるわけじゃないと思っての選択だったけど……。ボクの魔力って水属性じゃないからこんなヒドイことになっちゃったのかな?
「魔法が終わった後のこと考えてなかった……」
まあ、やっちゃったことは仕方ない。とにかく切るんじゃなくて同化をイメージ、同化をイメージ……。
「ええ~い!」
大鎌で、目の前に縫い付けられている『ナニカ』を一気に数ひき、振り回すようにして刈り取る。
「っとと、って、ええ~!?」
1周して2周目、あまりにも鎌が大きくて手からスッポ抜けちゃったよ……。いや、大きくなるってことは分かってたけどさ~、手で持てなくなるほど大きくなるなんて想定外だよ~……。
校庭の方からさらに来た数十ぴきを巻き込んでぐんぐん大きくなる……ぐんぐん大きくなる……ぐんぐん(以下略)
―― ドッカ~ン!!!!
「え~っと……」
「あ~か~り~! お前はなにをしてくれたのだ! このバカモン!」
「てへっ……やっちゃった?」
「カワイく言ってごまかすな! このバカモン、あれを見てそんなこと言える神経がおかしいわ!」
「あいた、痛いですって! ボクだってあんなになると思わなかったんですよ~……」
ジェイクさんに激しいねこパンチを頭に応酬されながら、校庭を見る。見事な大穴が……鎌の墜落でできてた。直径5メートルくらい? すっごいクレーターだ……。
「うわ~……鎌の大きさ、バスケットゴールの2倍くらいの大きさだね~、うん」
「納得してる場合かこのバカモンが! 早くなんとかしろ!」
「あいたたたっ……ねこパンチは止めてください~……。癒されますけど、けーすばいけーすなのですよ。分かりましたから~……『ブラックホール』」
もう大き過ぎてなにがなんだか分からないものになった大鎌を吸い込んだ。大鎌の魔力だけ吸い取った後に転がり落ちた杖を拾って、『リデュース』で魔力回復~っと。
「これで良いんですよね?」
「良くないわ~! このバカモンが! ああ……校庭にこんな大きな穴を……修繕費と始末書を誰が出すと思っておるのだ……」
「市役所……ですか?」
「確かに修繕費は市役所だが、始末書は今明が使ってる腕輪の契約主の私だ~! だからエルカの方の腕輪を修理したほうが良いと思ったのだ……。イヤな予感がしていたのだ……。どうして私が……」
がっくり、と大きく肩を落とすジェイクさん。ちょっとかわいそう……。
「あの……その……ごめんなさ~い……」
ジェイクさんの落ち込みまくった姿を見てると、ボクまで落ち込んじゃうよ……。ってしまった、周りのこと忘れてた。
素早く周りの状況確認。
校庭の真ん中で人が何人か固まって動いてるのが見えた。それに対峙するように校庭の上空にはとてつもなくでっかい鳥が飛んでいた。その鳥が、次々と鳥型の『ナニカ』を生み出してるようにみえる……。
「大きい鳥ですね~……」
「明らかに高ランクだな」
「あ、やっぱりそうですか? 『ダーク・チェーン』。ああゆーのって頭いいんですか? 『ブラックホール』っと」
「そうだな、以前キミが襲われた狼王タイプくらいにはあるだろう。しかも空中にいるからやっかいだぞ?」
「空中ね~……翼を鎖で縛って引きずり落とすとか?」
「できれば良いが……、翼を見てみろ。緑色の魔力におおわれているだろう?」
「ふぇ? ああ~……なんか緑色っぽいですね~」
カラスのように黒いのに、翼だけうっすら緑色に光ってるように見える。もしかしてあれで飛んでるのかな?
「空を飛ぶからには風属性の魔力を持ってるはず、小さいのもそうだが大きければさらに多い。高ランクなら鎧のようにまとってるはず。それを突破しなければ引きずり落とすなんて手段は厳しいだろうな」
校庭の真ん中、みんなに向かって走ってる最中にレクチャーを受けながら考える。
「う~ん……一回試してみる」
近づくにつれてなんだかみんな苦戦してるみたい。レッドやイエローは近接攻撃メインだし、ブルーもどっちかというと遠距離じゃないしなぁ……。なんとか戦えてるのはグリーンとフレーベルさんくらいか……。ミラさんは防御型だしなあ……。と言ってもグリーンの矢も避けられてあんまり当たってないように見えるし……。
ん? 矢? 矢か~……。今度は失敗しないようにちょっとだけ細工。杖を振り上げて左右に大きく振る。
「『ダークネス・アロー』! 行け!」
空中に黒い矢が50本くらい現れて、杖を前面に向かって振るう、と一気に全部飛んでった。
はじめは小さかったのにどんどん『ナニカ』を吸って大きくなって、どんどん太くなっていく……。そしてなぜかお互いの矢も吸収しあって……四角いブロックになってさらにどんどんでかくなってる……。
「お・い! 明!?」
「今回は大丈夫だってば~……」
大きな鳥は避けちゃったけど、小さいのは大体巻き込んで消えちゃった。
でもあのブロック大きいなぁ……一辺が30メートルとかありそう。落ちたら家とか押しつぶして大惨事だよね……。
黒い大きなひとつのブロックとなった矢が落下し始めた時、『ブラックホール』が発動してその中へスポンと消えてしまった。
「ほらね?」
「ほらね? じゃないわ! びっくりさせおって! 一般家屋を押しつぶされてたら私のクビどころじゃなかったんだぞ!?」
「ごめんなさい、ジェイクさん……」
ジェイクさんがボクの肩に飛び乗ってぐったり伸びてしまった。
なんとかみんなのところにたどり着いたけど、みんななんか怖い顔してる……。ボクなにかしたかなあ?
「エルちゃん!? 大丈夫なの?」
「そうだよ妹ちゃん、今まで倒れてたんでしょ?」
「うん? えっと、一応へーきです?」
「どうして疑問形なの……」
「あぅ……いえ! もうぜんぜん大丈夫ですよ?」
「ブラック、倒れたって聞いたけど……ムリするんじゃないよ?」
「本当です……無理してまた倒れてもしかたありません……」
「『雷光球』! っと、後はうちらに任せとき!」
「ええ~? こっちもかなり手一杯なんだから手伝ってよ~」
みんななんか緊張感無さそげな感じに会話してるけど、そんな余裕あるの? 攻撃ぜんぜん当たってないじゃん……。
「キサマカ? 黒イ小娘。我ガ配下ヲ尽ク滅シタノハ……」
あ、なんかイヤな予感……。なんか以前にもこんなことあったような~……。
「許サン!」
空を飛んでる大きい鳥の翼が緑色に光って、羽根のようなものがいっぱい付き出した。
「ぶっ『ブラックホール』!」
「囲め! 第三、『三点結界』!」
防御魔法の重ねがけをして防ごうとしたけど、ボクの魔法ではやっぱり属性違うとあんまり効果がないみたい。少しは吸収したけど、残りがいっぱい突破してきた。
「きゃあ!?」
地面にぶつかった羽根のせいで砂埃がもうもうとたった。誰の悲鳴かも分からないような声が聞こえたけど、いったいどうなったの?
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で『始末書と修繕費』の回でした。
という訳で、一皮むけた明が少しだけ暴れましたよ? というお話です。
吸い込んで自分の魔力として使うなんてある意味チートくさいような~……そうでないような~……。
と言うかまだ自分の力に振り回されてますよね(遠い目)
さて、次回の更新で第3幕の終了予定。
大ボス倒すためにみんなで奮闘するかもしれません。
それでは次回もよろしくお願いします(ぺっこり
▽20130413追記
次回で一応第3幕終了予定なので番外編のお題の投票アンケートを前回と同じように出しておきます。
興味があったら投票してみて下さい。
第2回ばっくわ~どまじっく番外編のアンケート
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