第28話 新生活のスタート!……という名の物怖じ
こんばんは。
予告通りに第3幕の開幕です。
前回から1週間後からのスタートです。
学園生活をお待ちかねの皆さん、今回よりスタートです。
まずは導入部分のお話をお送り致します。
(2012/11/27 体裁統一のためのチェック)
ジリリリリリリリリ――……。
「はぅあ!?」
慌てて騒音の元凶である目覚まし時計をたたいて懲らしめる。
べし~……ん――……。
「うぐぅ……イタ~い……」
痛む右手を振りながら布団をはねのけて起き上がる。胸に抱きしめてたものがごろ~んと転がった。
水色の生地にピンクのハート模様がいっぱいついた抱きまくらだった。今日でお世話になること2日目だ。
どうも女の子になってからボクは抱きつきグセができたみたいで、家族のみんなはあきれて抱きまくらを買ってくれたんだ。
こんなのでも与えておかないとボクを起こす時、抱きつかれて大変なんだとか……。ボクそんな手間のかかる子じゃないのに……。
なに気に3780円という高級品で抱きごこち満点の一品だ。なんか部分的に内部の材質が違ってて、クッションの部分とビーズの部分がつながってるんだとか……。
ちょっと納得いかないけど、その前に提案された『クマさんの特大ぬいぐるみ』よりか超絶マシだと思う。
なにが哀しくてこの年でクマのぬいぐるみを抱きしめて寝なくちゃいけないんだ!
「ふぁ~ぅ……うにゅ~……」
大きく伸びをしてベッドから降りる。
今日は月曜日、ボクの転校初日だ。
けっきょく先週の月曜日に戸籍を変更したのは良いけど、学校側の準備が色々とあったせいで今日まで転校は伸びてたんだ。
けっこう大変だったんだよ? 編入試験とか受けるの。
っと、そんなことより早く着がえなくちゃ……。
ボクのタンスの中からブラジャーとキャミソール、クローゼットのハンガーラックから新しい制服を取り出す。
紺色のジャケットに赤を基調としたチェック柄のスカート。これに合わせてブラウスには赤のリボンタイを付けることになっている。
ボクはパジャマを脱いでブラジャーを着けようとした……んだけど。
「う~……あれ? あれ? う~ん……?」
中々フックが留まらない……。
「なにやってるの明……」
二段ベッドの上から姉さんがのぞき込んでた。
「なにって……見て分かるでしょ?」
「待ってなさい……」
姉さんはのっそりとベッドを降りてボクのブラジャーのホックを留めてくれた。
「これくらい自分でやれるようになりなさいよ?」
「は~い……」
今、姉さんとボクは同じ部屋で生活してる。智樹が姉さんと入れかわったんだ。
みんなが言うには「兄弟とは言え年頃の男女が同じ部屋で生活するのはまちがってる」だって。そのせいで昨日はお部屋の引っ越し作業で1日掛かっちゃったんだよね……。
ちなみに姉さんと智樹が入れかわった理由は、
「明は女の子になったばかりで、ぜんぜん女の子としての生活方法知らないでしょ? しかたないから私がしばらくサポートしてあげるわよ」
だって。
実際、ボクは女の子歴1週間でぜんぜん何も知らない。
だから姉さんの申し出はすっごくありがたかった……んだけど。その後姉さんが、
「カワイイ妹との同室生活なんて楽しそうだわ」
って黒い笑顔を浮かべていたのを見てしまった。
これに関しては深く考えないことにしよう! うん、ボクの安全のためにね! 主に精神面での……。
「ほらほら、早く着がえないと遅刻するわよ?」
慌ててキャミソールを被ってその上にブラウスを着る。そしてスカートを引き上げて腰の位置を調節する。その後ジャケットを……。
「なにやってるの……先にタイでしょ?」
ジャケットにそでを通したところで姉さんがエリにリボンタイをしてくれた。
「ごめんね。姉さん」
その後ニーハイソックスを手に取ってベッドに腰掛けてはいた。
本当はスパッツとかの方が寒くなくて良いんだけど、ストッキングはピッタリし過ぎてイヤだし、スパッツはなんだかゴワゴワするし、フリフリのカワイイぱんつばっかりってのも大問題だよね!
はき終って姿見の前に立つ。
「よし! 準備おーけーだよ」
「大丈夫みたいね……」
ひとつうなずいて確認すると後から制服に着替えた姉さんがのぞき込んできた。
こうして並んで鏡に映ると本当に仲の良い姉妹に見える。
「さあ、ご飯を食べに行きますか……」
「うん!」
2人並んでダイニングへ向かった。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
「おはよ~!」
「おはよ~……」
姉さんと2人でダイニングにきたら他の3人はもう座ってた。
「おはよう、明、千夏」
「お兄、お姉、おはよ……」
「明ちゃん、千夏ちゃん、おはよ~。2人ともご飯とお味噌汁だけで良い?」
「うん」
「ええ……」
姉さんと2人で食卓に着くとすぐにご飯とお味噌汁が目の前に並べられた。
「「いただいます」」
2人して手を合わせて食べ始めた。
「明も今日から女子高生、新生活のスタートだな。制服良く似合ってるぞ?」
なんかそう言われると2回目の高校の入学式みたいで照れ臭い。
確か男の子だった時の高校の入学式も父さんに同じこと言われた気がする。
「ありがとう、父さん」
「ほ~んと、似合いすぎててカワイイけど、男の人には注意するのよ~? さらわれちゃいそうでお母さん心配だわ~」
「心配し過ぎだよ?」
「そうよ? 私も一緒に登校するんだし……明は私が守るわ」
姉さんが気だるげな感じで笑った。
「でもお兄……」
口を付けてたお味噌汁のお椀を離して智樹が顔を上げた。
「世にはヘンタイはいっぱいいるんだから注意しなくちゃいけないぞ?」
本当に心配そうに智樹が言った。
そんなにボクって心配されるような頼りなさなのかなぁ……。
「でも、そうそう出会わないよ~、そんな人」
「お兄は甘いよ」
苦笑しながらそう答えたら、智樹がおはしでボクを指した。
ちょっと、行儀悪いよ? 智樹。
「主に誰とは言わないけど……確実に一人いるだろう? 生活圏の200メートル内に」
その言葉で一人該当者が浮かんでしまった……。
そうだよ! アイツがいたじゃないか……どうして気付かなかったんだ、ボクは!
「やっと分かった?」
智樹が半笑いでそう言うと席を立った。
「ごちそうさま! それじゃあ行って来る」
「いってらっしゃい」
「がんばってこいよ?」
「いってらっしゃ~い、智樹ちゃん気を付けて行って来てね」
ボクも慌てて「いってらっしゃい」を言おうとしたけど、もう智樹はいなかった。
それにしても不安だ……。全然ボクって『アイツ』に関して考えてなかったよ。どうして今まで気付かなかったんだろう。
いや、理由は分かるんだけどね……。
一応女の子になって10日経ったけど、未だにボクは自分の女の子の姿を自分に重ねられないでいるんだ。
なんだろう? 拒否感? ううん、違う。未練なんだろうか?
どうしても自分が男の子だって思いたくなってしまうんだ。
だから『アイツ』に関しても他人事で自分に対しての天敵になり得るとは考えもしなかったんだ。
「ほらほら、なにをぼーっとしてるの~? 転校初日から遅刻しちゃうわよ~?」
母さんに言われてはっと気付いて朝ごはんを再開した。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
朝ご飯を食べて、身支度をした。
女の子って朝は大変だっていうけど、本当に大変だよ。
髪型のセットとか化粧水とかUVカット効果のある乳液とかぬらなくちゃいけなかったりね。
基礎化粧品って言うんだってさ。
ボクの肌って一般の人より白くてキレイだからゼッタイ忘れないようにって口酸っぱく言われてるんだよね。
化粧品は先週の土曜日に買いに行った。
デパートで2時間かけての化粧品のレクチャーとか大変だったよ~……。まあ、その分抱きまくら買ってもらったんだけどね……。
やっぱり女の子はイロイロと気を付けることが多くて大変だよ。このせいで朝は15分も早く起きなくちゃいけなくなったし……。まあ、なぜか男の子の時よりも朝は起きるの辛くないからまだガマンはできるんだけどね。
でも、化粧水とか乳液とかけっこうな値段してたし、なんだかお金もいっぱいかかっててめんどくさい。
玄関の姿見で最終チェック。
服の乱れは……無いね!
一応前日に着こなしのレクチャーを姉さんから受けてたからね!
制服のスカートは腰の位置が重要だってさんざん言われた。ボクって腰の位置が普通の人よりちょっとだけ高いみたい。
「お待たせ~」
姉さんが身支度を終えて玄関に来た。
「明は良いわよねー、寝癖が付かなくて。私もそれくらいストレートが良かったわ」
姉さんの髪はちょっと茶色がかった天然ウェーブ気味で、ボクの真っ黒ストレートと比べると今風だ。
「そう? ボクは姉さんの髪くらいの色とウェーブの方が良いなぁ」
「お互い無い物ねだりか」
「そうかも?」
2人して笑ってしまった。
お互いチェックし終わって、玄関から外に出る。
その後を父さんと母さんが着いて来た。
「それじゃあ2人とも気を付けて行ってくるのよ~? 明ちゃんはなにかあったら携帯に連絡しなさいよ?」
「は~い」
うなずくと父さんがデジカメを取り出した。
「ほら、2人とも並びなさい。写真を取ってあげるから」
「いいよ~……照れ臭いし~……」
しぶるボクの首を姉さんがガシリと組んで引き寄せた。
「あぅ……」
「せっかくだしお願いしましょう? 初登校のワンショットなんて貴重なものよ」
姉さんの言うことも一理あるかも。
「じゃあ……お願いしよっかな?」
「そう来なくっちゃ!」
なに気に一番喜んでるの姉さんな気がする。
「それじゃあ2人とも並んで」
父さんの指示に従って玄関先に姉さんと並ぶ。と、姉さんがボクの真後ろに回り込んで抱き付いて来た。
「ちょっ!? 姉さん!?」
「まあ良いじゃないの~……」
にまにま笑ってそんなこと言った。なんだか拒否し辛い展開だよ。
「ほらほら笑って笑って」
「いくぞ? ハイチーズ!」
父さんの声でカメラのシャッターがきられる。
「ありがとー」
「それじゃあ、明。そろそろ行きましょう」
「うん……って……」
姉さんがボクの右手をにぎって引っぱった。なにこの展開……恥ずかしいじゃないか……。
姉さんを見上げると普通のいつもの変わりない表情だ。
もしかして恥ずかしがってるのボクだけ?
「2人とも気を付けて行くんだぞ」
「いってらっしゃ~い」
父さんと母さんに見送られて、ボクは姉さんと並んで転校初日の初登校をすることになった。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で第3幕が始まりました。
明ちゃん、1週間も女の子している分少しずつ慣れて来た感じですね。
もう少し女子力あっても良いのかなぁ?と思いますが1週間じゃあ付け焼刃ですよね(苦笑)
あ、今回から一人称が『僕』から『ボク』になってます。
光さんや千夏ちゃんから「女の子はもうちょっと柔らかく言葉を使うものです」とせんnもとい再教育されたので多少言葉遣いが柔らかくなって……いると信じたい(遠い目)
さて、明ちゃんが気になっている『アイツ』とは誰なのか……皆さんは分かっていると思いますが『アイツ』です。
第3幕で正式登場するのでご期待ください(ぇー)
新しく始まった第3幕は学園生活がメインになってきます。
大体学園生活部分6の家庭環境3の魔法少女のお仕事1か2の割合でしょうか。
ちょっとだけアクティブになり始めた明ちゃんの生活はどうなっていくのでしょう?
がんばって書いて行くのでよろしくお願いします(ぺっこり




