第10話 母さんが魔法少女!……という名の不幸
前回ぶった切った部分の後半です。
今回も説明調なので会話多めです。
もう少し動きが欲しいなぁ……と思ったお話をおおくりいたします。
(2012/11/12 体裁統一のためのチェック)
気付いたら母さんが僕を抱きしめていた。
小さく震える声で「ごめんね……」とつぶやく母さん。
今までイジメられてたから分かる。母さんは僕に嫌われたくなかったから言えなかったんだと思う。他人にどうしても負い目があって怯える姿は僕も同じだった。
そんな母さんを気付いたら抱きしめていた。
怒りじゃない。悲しみじゃない。それ以外を感じる。
驚いたけどそれでも分かる。僕は母さんに愛されてるんだと。
精いっぱいの力を込めて抱きしめ返した。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
しばらく親子で抱き合っていたけれど、控えめな声でお猫さまが声を掛けて来た。
「そろそろ落ち着いただろう。光、どうして佐伯明くんの魔力に気付かなかったのだ? 事前に気付いていれば対処ができたものを……」
その言葉に驚いて母さんが顔を上げた。
「え……? 魔力? 明って魔力持ってたの?」
その言葉は僕に向けられているんだろうけど、僕には正直良く分からなかった。
「いや~……僕に聞かれても~……」
かわいく首をかしげながら聞かれても反応困るよ。
「子供の前じゃ魔法なんて使ったことないから気付かなかったわ」
苦笑交じりの母さんの顔を見ると気付いていませんでしたと言いたげだった。
そんな母さんにお猫さまが鋭い声で、
「光! 変身だ!」
と叫んだ。
「本当は見せたくないんだけど……『ライトアップ』!」
母さんが叫ぶと左手の銀の腕輪を中心に激しい光が出た。そうだよ今気付いたけど、いつも母さんが左手にしていた銀の腕輪って僕が今しているものと同じじゃないか……。
まぶしい光が治まる。白い小さな羽が背中に着いたピンク色のフリルがふんだんにあしらわれたドレスに大きな帽子。右手に持ったピンク色のステッキは少女趣味の塊。流れる金髪に青い瞳が印象的な女性が現れた。
「魔法少女ライムライト。聖なる光に導かれてただ今参上!」
今年42歳だと言われても冗談に思えるくらい若作りな母さんだけどさ、そのカッコウは反則だよ……。予備知識を持っていたから覚悟は決めてたけどさ……。
僕はたまらなくなって目を反らすと母さんは顔を歪ませた。
「ほら~……ドン引きされたじゃな~い……」
それでも涙目がちょっぴりかわいい母さん……だった。
「いや、多分『少女』という言葉に拒絶感を覚えたんだと……」
お猫さまがフォローしようとしてくれてるんだろうけど、あまりフォローになってない気がする。それどころか傷口えぐってるような気がするよ。
「母さん、若いのは分かるけどやっぱり見てるとはずかしい」
「うう……ショック」
ガックリと肩を落としてしまった。これは結構後まで尾を引きそう……。後でごきげんとるしかないのかなぁ?
「それよりも『魔力覚』で見ると分かるはずだ」
「そうね。どれどれ……」
母さんが僕をじーっと見つめる。と目が青く光り始めた。ちょっと怖い……。
「ねぇ、母さん……どうして目が光ってるの?」
「ん? これはね、魔力の流れを見るために瞳に魔力を集めているの。そのせいで光るのよ?」
母さんは僕の頭から足まで全身見るとため息をついた。
「本当に魔力を持ってたのね……。普通男の子は強い魔力を持つことがないから全然気にしてなかったわ。この魔力量、私の倍以上あるんじゃないの?」
「母さんの倍ってそんなにすごいの?」
「すごいってものじゃない。光はこの地域では歴代五指に入る程の魔力の持ち主なんだ。それに、君本来の魔力に加えて光の『願いごと』の魔力そのものも吸収してしまっている。正確に測定したら君の魔力は日本でも歴代有数の魔力の持ち主と判定されるかもしれない」
日本歴代有数……スケールが大きすぎてイマイチ良く分からないけど、とんでもなくすごいってことだけは分かった気がする。
「明がそれだけすごいってことよ? お母さん鼻が高いわ~」
本当なら褒められて嬉しいはずなんだけど、立場が立場なだけにそこまで嬉しく感じないなぁ……。
「佐伯明くんが女性体になった理由のひとつはその膨大な魔力量だ。恐らく佐伯明くんの魔力が『願いごと』の魔力を打ち消したのだろう」
つまり、僕にかかってた『願いごと』を僕の魔力が強引に破っちゃったってことなのかな?
「推測するに君の魔力成長期に『願いごと』が成長ギブスのような役割を果たして、今の魔力量に成長したと考えるのが妥当だ。その成長し過ぎた魔力が最近漏れ始めたのだろう。今日、君が狙われたのはそれが理由だ」
てことは、僕が今日襲われなくてもいずれは襲われたってことなのか……。たまたまフェアリーレッドさんが助けてくれたから良いものの、もし来てくれなかったら死んでる訳だし、そうそう都合よくどんな時でも助けてくれるわけじゃないもんね。
「まあ一番の原因はエルカ、君なんだがな」
「ふぇっ!? あたしですか!?」
ふいに話しのホコ先を振られて妖精さんが慌てる。そう言えば、原因は妖精さんだってお猫さまが言ってたもんなぁ。
「君が略式契約なんてしなければ彼の魔力は解放されることはなかったし、解放された魔力によって『願いごと』が解除されることもなかったんだ」
てことはやっぱり直接原因はあの契約だったのか……。
「申し訳ないです……」
「今回始末書は10やそこらじゃ足らないからな! しっかり処理したまえ」
「うへぇ……そんなにですか~?」
始末書10枚オーバーっていったいなにをどう連鎖させたらそんな数になるの? 妖精さん。
「一般人の避難誘導の失敗、同意なしの略式契約及びそれの行使、意図はしていなかっただろうが願い事の破棄、その他諸々考えるとそれくらいは覚悟するべきだ」
「あぅ~……」
「さて、佐伯明くん。以上で今回の顛末の話は終わりだが、なにか聞いておきたいことはあるかね?」
と聞かれてもなぁ……。
「さっぱりです。自分でも整理できてないから、なにを聞けばいいのか分かんないよ」
「それならば、分からないことがあったら光に聞くと良い。光、頼んだよ」
「ええ」
「それじゃあ、月曜日の朝に返事を決めて来るように」
「え? 放課後じゃないの?」
学校があるし、月曜日の朝ってことは休まなくちゃいけないのか……。まあ学校自体、イジメの対象になってる分、行きたいとは思えないけどね……。
「その姿で今の学校に行けるかね?」
ふと思い出して自分の体を見る。
「それは……ムリ……かも……」
そういえば女の子になってたんだっけ。話が大きすぎてついつい忘れちゃってたよ。
行ったとしてもどう説明すれば良いのか分からないし、こんな姿で学校になんて行く勇気がないし……。
「申し訳ないが佐伯明くん。君は県立章栄高校に編入という形をとると思うからそのつもりでいたまえ」
そっか、転校か~……。ってちょっと待って。
「ええっ!? 僕転校するんですか? 入学して1週間も経ってないのに」
「章栄高校は周辺3都市内で『魔法少女科』が唯一ある学校だからね。佐伯明くんは今でも十分狙われるレベルの魔力を保有している。護るためには仕方ないことなのだ。君は魔法少女になる、ならないに関わらず転校することになる」
「はぁ、そうなんですか」
でもまあいっか、県立章栄高校って実は第一志望校で今の学校は滑り止めだったから、願ったり叶ったりだったりするんだよね。
今一番気になるのは『魔法少女科』かな。
「『魔法少女科』ってもしかして女の子ばっかりのクラスだったりするんですか?」
「基本的には女子生徒の多いクラスだな。基本的に女性の方が魔力を持つ者が多い。魔力を持つ子供を保護するための学科だから男子生徒もいるだろう」
「そうですか」
とりあえず今聞きたいことも無いしもう良いかな。正直これ以上情報もらっても整理しきれないよ。
「ああ、光。佐伯明くんのために章栄高校の入学願書と資料を持って行ってくれたまえ」
「分かったわ」
「それでは佐伯明くん。今日はもう光と一緒に帰っていいからね」
「はぁ」
母さんが僕の肩を叩いたので立ち上がった。
「それじゃあ失礼します」
「失礼します」
母さんと連れ立って課長室を出ると、後ろで妖精さんの悲鳴が聞こえたような気がした。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
今回もセリフ多い回で申し訳ないです。
4月15日はサンシャインクリエイションにサークル参加してきます。
多分参加した後の疲れでまた更新遅れそうです(汗)
ただもう少しではなしの区切りがよさそうな所まで行きそうなので頑張ろうと思ってます。
という訳で今後もよろしくお願いします(ぺっこり




