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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


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婚約者である彼は私と会う時いつも冷ややかな目をしています。

 婚約者エリトリッジは私と会う時いつも冷ややかな目をしていた。


「この紅茶、とても美味しいですね」

「……ふん」

「エリトリッジさんはお好みでないですか?」

「知るか」


 努力してこちらから話しかけても、極めて短い言葉にもならないような言葉を返してくるばかりで。


「エリトリッジさんは、好きな飲み物はあるのでしょうか?」

「………」

「紅茶はあまり、ですか?」

「……知るか」

「よければまた教えてくださいね。好きなものは共有したいですし」

「……だらね」


 仲良くしようという考えは一切ない様子で。


「本日はありがとうございました」

「……ふん」

「またこうしてお茶できれば嬉しく思います」

「うっざ」


 帰りしなでさえ。


「……こっちは嫌だっての」


 彼は心なく吐き捨てるほどだった。


 ――そんな彼は、ある晴れの日、突然この世を去った。


 その日彼は私ではない女性とお出掛けしていたそうだ――噂によればその女性のことを愛していたのだとか――まぁ、それは置いておくとして。


 女性と二人で出掛けていたエリトリッジだったが、街の酒場で飲んでいたところ酔っ払いに絡まれ揉み合いになり、その最中によろけて転倒。テーブルの角で頭を打ってしまい、その場で落命することとなってしまったそうだ。


 また、エリトリッジと一緒にいた女性も、その酔っ払いに殴られ病院へ搬送されたらしい。


 ……結果、私とエリトリッジの婚約は自動的に破棄となった。




 あれから三年。

 私は良き人と巡り会うことができ、その人と結婚、穏やかな家庭を築くことができている。

 平穏の中にこそ真の幸福があるのだと、彼との日常が教えてくれた。


 だから私はこれからもこの日常を抱き締めて生きてゆく。



◆終わり◆

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