身勝手な理由で婚約破棄してにやにやしているような男性とは……生涯を共にするのは不可能ですね。
「君のようなパッとしない女性と婚約なんてするんじゃなかった! ああ、もう、過去の自分が嫌になる……僕に相応しいのは君みたいな人じゃないのに。ということで! 僕はもう心を決めた、君との婚約は破棄とする!!」
婚約者エリオは突然告げてきた。
二人の関係の終焉を。
「愚かなロークオリティ女、永遠にさよなら」
別れしな、エリオはそんなことを言った。
悪質な笑みを面に滲ませながら。
不気味なくらいにやにやしながら。
自分が切り捨てる側となったことが嬉しいのだろう。優位に立っているように感じて、それで、そのような表情になっているのだろう。そうでなければこの状況で笑みを浮かべるなんてことにはならないはずだ。それもこんな穢らわしいような黒ずんだ笑み。普通はこのような改まった場では出ないはずのものだ。
……まぁ、しかし、彼との関係は終わった。
もうこれ以上あれこれ言うつもりはない。
なぜならそんなことをしていても無意味だから。
終わったことに目を向けてあれこれ言っても何の意味もない、ならば未来を見据えるべきだろう。
――あれから一ヶ月。
私には良き結婚相手候補が現れた。
エリオは繁華街で知り合った女性にはめられ高額な借金を背負わされて自らの意思でこの世を去った。
私たち二人のその後は真逆のようなものとなった。
彼は暗闇に沈み消えて。
私は希望へと歩き出す。
婚約破棄した側が有利、とか、婚約破棄された側は人生が終わる、とか――そんな単純な話ではないということが証明された形だ。
だから私は良き人生を諦めない。
自分に非があって婚約破棄されたわけではないのだから、堂々としていればいい。
私は私の道を行く、と。
すべてを失ったかのように酷く落ち込む必要なんてない。
相手がおかしなことをしてきただけなのだから。
私は自分らしく道を歩めばそれだけで良いのだろう、きっと光ある未来は掴める。
◆終わり◆




