とある晩餐会にて、婚約破棄宣言されました。~彼には明るい未来など訪れない~
「貴様との婚約は、本日をもって破棄とする!!」
婚約者である彼ロビャートは、とある晩餐会にて、大勢の無関係な人もいる前でそんな宣言をいきなり行った。
周囲の人たちはいきなりのことに驚き気まずそうな顔をしている。男性も、女性も。ある人は「何事なの……?」とこぼしながら怪訝な顔をし、複数人で会話していた婦人たちは「こんなところでそんな話をするなんてどうかしているわ。意味不明ね」「どうなってるのかしら」などと控えめな声量で言葉を交わしている。
「少しは期待していたのだが……それが悪かったな」
「どういうことですか?」
「貴様が思ったよりくだらない女だったということだ」
「そうですか」
「本当に分かっているのか? 理解できたのか? そうなら、せめて、土下座して許しを乞うくらいしろよ」
ロビャートはそんなことを言うけれど、さすがにそこまでやる気はない。
「今までありがとうございました」
私は彼に執着はしない。
なぜならそこまで彼を求めてはいないから。
この世界に愛せる人が彼しかいないわけではない。……いや、そもそも、私はそこまで彼を愛していなかった。ただ婚約者であっただけで、それ以上の感情は私の胸にはない。
だからさよならが来るならそれはそれで仕方がないことと受け入れられる。
◆
あれから数年。
私は親の知人の紹介で知り合った広い心の持ち主と結婚した。
今は彼に大切にされながら日々を楽しんでいる。
どんな時も優しさで包んでくれるような彼のことを私も深く愛している。
これからもこの幸せを守ってゆきたい。
で、あの時私を切り捨てたロビャートはというと、あの後謎の病にかかり段々動けなくなっていったそう。
それで、先日ついに、この世を去ることとなってしまったのだとか。
自分勝手な生き方をしてきた心の黒い彼には光ある希望ある輝かしい未来は待っていなかったようだ。
苦痛と絶望の中で生きる。
そして、ただただ、転がり落ちるように終焉へと向かう。
だがそれはある意味当然の結末。
彼に最も相応しい終わり。
◆終わり◆




