昨日婚約破棄された者です。私は私の人生を歩んでゆきます。~彼のその後なんてどうでもいいので知ろうとは思いません~
ある晴れた昼下がり。
特に何の意味もないけれど、一人、家の近くの公園へ続く道を歩いていた。
……実は昨日婚約破棄された。
私には二歳年上の婚約者がいた。彼との関係はそれなりに順調だった。けれど彼はいつの間にか私を良く思わなくなっていたようで。ある日突然婚約破棄を告げられてしまった。彼はずっと前から私の喋り方が嫌いだったらしい。言わないようにしていたけれど、とのことだったが、時の経過と共に耐えられなくなって、それで婚約破棄を告げるに至ったのだそうだ。
まさか喋り方によって婚約破棄されるとはなぁ、と思い、切なさを感じながらも取り敢えずなんてことのない今日という日を生きている。
私も完璧な人間ではない。
だから時には他者を不快にしてしまうこともあるのだろう。
……相性が悪かったのだ、きっと。
そう考えて心を整理することにして。
今はただ明るい未来を信じることにした。
まだ希望は見えずとも、きっと、いつかは平穏と幸福に出会えるはず。
取り敢えずそう信じてみよう。
前向きな思考こそが未来に明るい光を降らせてくれるはずだから。
◆
あの婚約破棄の後、趣味で編み物を始めたのだけれど、それが思いの外上手くいった。
多くの経験を積んだことで良い作品を作れるようになった。
そしてその技術が評価された。
おかげで私は国から表彰されるまでに成長した。
婚約破棄は一つの大きな出来事だった。そしてそれはあまり良いことではないかのように感じられていた。
が、結果的にはそれが良い未来を生み出してくれた。
あの時、手にしていたものを失ったからこそ、私は今こうして名誉を手に入れられている――そう考えると、あの出来事もそんなに悪いことではなかったと思えるのだ。
彼には感謝している。
あの時切り捨ててくれてありがとう、と、今なら嫌みではなく純粋な心でそう言える気がする。
彼のその後は知らない。
でもそれでいい。
もう私たちは婚約者同士でも何でもないのだから。
他人になったのだから、これ以上関わる必要も知る必要もない。
私は私の道を歩んでゆく。
真っ直ぐに。
思いのままに。
自分が選んだ道を、一歩一歩、着実に進んでゆく――それが理想的な生き方というものだろう。
◆終わり◆




