身勝手に婚約破棄した彼はあっさりした最期を迎えたようです。~天罰は下るのでしょう~
「お前のような女とは一緒にいてもちっとも楽しくない! よって、婚約は破棄とする!」
黒髪の婚約者ロバーツ・デット・ディップはいきなりそんなことを言ってきた。
私たちは確かに婚約者同士だった。
それなのに彼はその関係を平然と叩き壊した。
「本気で仰っているのですか?」
「そりゃそうに決まってるだろがアホ」
「……アホとは、失礼ですよ」
「はああ? うっざ! アホにアホて言って何が悪いんだよ。事実だろが!」
これまで築いてきたはずのものは一瞬にして崩れ去る。
「と! に! か! く! お前はもう要らねえんだよ!」
「そうですか」
「無価値なんだよお前は!」
「……それが貴方の本音なのですね。分かりました」
「分かったならさっさと消えろや!」
その日私たちの関係は笑ってしまいそうなくらいあっさりと終わりを迎えたのだった。
――あれから三日が経った昼下がり、ロバーツはこの世を去った。
その日ロバーツは私と婚約していた頃から裏で付き合っていた女性とお出掛けしていたそう。しかしその帰り道事故に巻き込まれた。崖が突如崩れてくるという事故に。大量の土砂がたまたま通りかかっていたロバーツらに襲いかかる。そうして二人は土砂の下敷きとなってしまって。そのまま落命した、ということのようだ。
自分勝手に生きてきた彼に幸せな未来はなかった――否、それどころか、彼には平凡な未来すら存在しなかった――生きてゆくこと自体が不可能、という運命だったようである。
ある意味それは償いだったのかもしれない。
運命が彼にそういう償いを求めたのだろう、恐らくは。
そういう意味では、彼の死も、ある種の定めだったと言えるだろう。根拠はない。ただ、そうだったのではないか、と思うのだ。でなければそんな災難に見舞われるとは考え難い。
もちろん災難に見舞われた人が皆そうであるというわけではないけれど。
彼の場合はそうだった――そういうことなのだろう。
◆終わり◆




