心ない言葉と共に婚約破棄されました。~どんな出来事も過ぎ去れば案外そうなって良かったと思えるものですね~
「なーんかさぁ」
「何?」
「お前って面白くねぇよな」
学園時代に知り合い、現在は婚約者となっている、男性ロバートス――彼が自ら話しかけてきた。
かなり珍しいことなので警戒してはいたのだけれど。
「てことで、婚約破棄するわ」
告げられたのは予想通りの言葉。
お世辞にも嬉しいとは言えないものである。
「婚約破棄……本気で言っているの?」
「もっちろん」
「冗談じゃないのね」
「ああ」
「そう……でもまたかなり急じゃない。一体どうしたの? 何かあった?」
一応尋ねてみたのだけれど。
「うるせえ!!」
怒られてしまった。
「うっさいんだよ! 何だその言い方! ふざけんな! お前みたいな女はへこへこしてりゃいいのにさ、そーんな偉そうな物言いしやがって、絶対許さないからな! 婚約破棄だ! 破棄決定だ! 決めておいて良かった! ……ふぅ。お前なんか価値のない女なんだよ。そのくせそんな偉そうな口の利き方すんだからなおさら最悪だわ」
ロバートスはそんな風に攻撃的な言葉ばかり吐く。
「何かあったのか、とか聞くとか、ほーんとイテェやつ。女のくせに対等に話してんじゃねーっての。馬鹿だろ。女は男に媚びてりゃそれでいいのにさ。何を偉そうに威張ってそんな質問してんだか。しかも質問してる時の顔しっかり馬鹿っぽいしさぁ。ま、顔が脳の価値を表すってあながち間違いでもないのかもなー。お前ほんと馬鹿丸出しの顔面だもんなぁ。しかも態度わるわるだしなぁ」
彼は一時間半ほどそういった心ない言葉を吐く行為を続けたのだった。
翌朝、実家の自室で目を覚ました私は、ロバートスの訃報を耳にすることとなった。
彼は昨夜亡くなったらしい。
寝ようとしていたところ急に体調不良になり意識さえ怪しい状態となりそのまま……、といった感じだったそうだ。
いつも威張っていた彼の最期は実に呆気ないものであった。
ロバートスとの関係が終わりちょうど一年となる日、私は結婚した。
過去のことなどどうでもいい。
しかしだからといって過去が消えるわけではない。
ただ、婚約破棄もそんなに悪いことではなかった、と今は思える。
彼が切り捨ててくれたからこそ良き人と巡り会え結婚もできたのだから、ある意味ロバートスには感謝感謝である。
◆終わり◆




