「お前なんてくだらない女だ! 俺に相応しくない。よって! 婚約は破棄とする!」……ですか。そうですか、分かりました。ではさようなら。
「お前なんてくだらない女だ! 俺に相応しくない。よって! 婚約は破棄とする!」
婚約者エオリオットがいきなりそんなことを言ってきた。
「え……いきなり何を?」
「聞こえなかったというのか。はは、そうか。耳が遠い、とはな。まさかそこまでだとは思わなかったぞ」
「いえ、そうではなくて、いきなり過ぎて理解できないということなのですが」
「やはり婚約破棄して良かった! この選択は間違っていなかった。俺は賢かった! この距離で言ったことさえ聞き取れないような女なら、やはりお前は俺の隣にいるに相応しくない女だ」
会話が成り立たず困っているうちに追い出された。
なんということだろう……。
まさかこんなあっさり関係が終わるなんて……。
だが、あそこまで話が成り立たない人と結婚するというのは、かなりリスクのある行為だろう。
そういう意味では婚約破棄されて良かったのかもしれない。
結婚後にその本性に気づいても手遅れだから。
取り敢えず今はあれこれ考えず私のために生きよう。
それが自分にできることだから。
ならばそれを一生懸命やっていくしかない。
……どのみちできることはそれしかないのだから。
◆
婚約破棄から数年。
私は無事良き人と結婚できたが、一方で、エオリオットは変な女性に捕まってしまいほぼ強制的に結婚させられることとなってようだ。
お互い結婚したことは事実だけれど。
その先に幸せがあるかどうかは真逆のような状態であった。
あの時捨てられたことは悪いことではなかったのかもしれない、と、今はそう思える。
エオリオットとでは見られなかった希望ある明日を今は純粋に真っ直ぐにこうして見つめられているのだから、きっと、この人生もそんなに悪いものではないのだろう。
◆終わり◆




