朝起きたら婚約者から連絡がありまして。~何だかやたらと上から目線なのは気になりますが取り敢えず会いに行きますね~
朝起きたら婚約者エリオンから連絡があった。
すぐ自分の家へ来い、と。
なぜかやたらと上から目線な指示。
「大丈夫か? 私も同行した方が良いのではないか?」
「ありがとう父さん。でも大丈夫よ。私だってもう子どもじゃないもの、何とか上手くやるわ」
「そ、そうか。分かった。……だが、何か困ったことがあったなら、すぐに言うんだぞ? 私はいつもお前の味方だ。可愛い娘の、な」
娘を溺愛している傾向のある父は気にかけてくれていたけれど、いきなり父と行動するのも変かなと思ったので、取り敢えずは一人でエリオンのもとへ行ってみることにしたのだった。
「来たナ」
「エリオンさん……こんな急な呼び出し、一体何が?」
彼は待ち構えていた。
不自然な偉そうさを放ちながら仁王立ちしている。
「遅かったじゃないカ、逃げるかと思ったゾ」
「用件は何でしょうか」
「こちらの言葉は無視するんだナ。……だがまぁべつにそれでもいいサ。では早速、本題に入ろうかナ」
彼は一度深呼吸をして、改めて口を開く。
「お前との婚約だが、破棄することとしたんダ」
……やはりそういう話、か。
「お前は俺には相応しくナイ。俺に相応しいのはもっと美しく可憐な乙女だろウ。しかしお前は理想的な姿とはかけ離れていル。そう、つまり、お前は俺には相応しくない女なんダ」
エリオンは自分勝手なことを散々語り。
「お前は要らない。だからここまでダ。さよなら、永遠に」
最後は明確に別れの言葉を発した。
「……って、ことで、婚約破棄されてしまったの」
家へ戻った私はすぐに父にこのことを話した。
「なっ!?」
「なんかね、相応しくないんですって」
「は、はああ!?」
「お前は俺には相応しくない、って。そんなこと言うのよ。何回も……」
エリオンが言ったことを知るや否や父は激怒する。
「何なんだそれは! こんなに可愛い女性に対してそのようなことを言うなど! なんという愚かな男! ……まったく、理解できない。こんなに可愛い娘だというのに、こんなに聡明だというのに……馬鹿にするなど! 見下すなど! 許せんぞおおおおおッ!!」
ただ、父は全面的に協力してくれたので、その後の手続きなどで困ることはほとんどなかった。
◆
あの理不尽な婚約破棄から二年と八ヶ月、結婚式を挙げた。
「これからもよろしくな」
「ええ」
エリオンとの関係が終わって間もなく知り合った高貴な家柄の彼とは最初からなぜか気が合った。けれどもその時はまだ結ばれるなんて思っていなくて。ただ、想いの行く先は確かにあって。気づけば関係は進んでおり、自然な流れで、結婚するに至った。
ちなみにエリオンはというと。
あの婚約破棄の後、謎の災難に連続して見舞われ、それによって心を病んでしまったそうだ。
また、家から出ないようになったために体調も悪くなり、最終的には幻覚や幻聴に襲われるようにまでなって。
……その果てに自ら死を選んだそうだ。
◆終わり◆




