一方的に婚約破棄してくるような身勝手な王子とはお別れです。~分かり合えそうにないですね~
一国の王女である私ルイーザは隣国の王子アマルンと婚約している。
これは国と国の意向により生まれた関係だ。
だが不満を抱いてはいない。
なぜなら私たちのような人間の人生は基本的に国の意向によって決まるものだから。
一般人に生まれていたなら「相手くらい自分の意思も含めて決めたい!」といったような主張をしていたかもしれないけれど。
でも、王女である以上は国のより良い未来のために生きるのは当たり前のことで、それは不満を抱くようなことではない。
私は王女だ。だから王女として相応しい生き方をする。小さい頃からそうやって教育を受けてきたし、だからこそ、私は私が選ぶべき生き方というものを理解している。
……だがアマルンは違っていた。
彼は私と婚約していることに常に不満を抱いていて。
周囲にたびたび愚痴をこぼすなんて序の口。
しまいにはメイドと深い仲にまで発展する始末。
彼には王子の誇りというものがなかった。
――そうしてついにその日はやって来る。
「ルイーザ、俺はお前を愛せない。なぜならお前には価値がないからだ。お前は王女だが女としては完全に無価値だ。つまり、俺にはお前と生きる意味がないということ。……この後何を言おうとしているのかもう分かるな?」
急に呼び出されたと思ったらそんなことを言われて。
「お前との婚約は破棄とする!」
関係を一方的に叩き壊される。
「本気で仰っているのですか?」
「当たり前だろう」
「ですが……私たちの婚約は、両国の未来のためでもあるのですよ」
「んなもん知るか!!」
アマルンは国の未来など少しも気にかけていない様子だ。
「俺は俺の人生を行くだけだ。国のことなんてどうでもいい。俺はな、特権を利用して好きな女と遊んだり贅沢したりしながら生きられればそれでいいんだ」
「酷いことを仰いますね」
「せっかく王家に生まれたんだ、それを利用しないとな」
「……貴方には、王族としての誇りは、少しもないのですね」
「誇り? くっだらねぇ。そんなこと言うのは価値のないくだらない人間だけだろ。はっはっははは。お前みたいな、な!」
私たちは分かり合えない。
二人の間には決して乗り越えることのできない壁があった。
◆
あの後アマルンの国は滅んだ。
我が国ではないが近隣に位置する国と揉め事になり、戦争にまで発展してしまい、勇ましく戦い始めたもののあっという間に敗戦したのだった。
ある意味、縁を切っていて良かったのかもしれない……。
あのまま関係が保たれていたら、きっと、我が国もその戦いに巻き込まれていたことだろう。
そういう意味では婚約破棄は幸運なことだったのかもしれない、と、今はそう思う。
で、王子であるアマルンは処刑された。
もちろん彼一人ではない。王族たちは皆大衆の前に晒されたうえ処刑されたのだ。相手国は民を虐めるよりも王族の尊厳を壊すことを重視していたようだ。
一方私はというと、国のために外交面での様々な仕事に取り組んでいる。
毎日とても忙しい。
でも楽しい。
充実感を肌で感じつつ生きることができている。
他国の高貴な人との結婚話も出ていることは出ているのだが――それはまた、もう少し先のお話。
◆終わり◆




