時の流れというのは決して止まることはないのです。だからこそ、私は私の人生という道を歩むのです。
朝が来る。
穏やかな日射しと共に。
柔らかな光が窓から降り注ぎ、新しい一日の幕開けを感じる――昨日までの私はもうどこにもいない。
……そう、私は昨日、婚約していた彼エリヴォッツから関係の終わりを告げられてしまった。
数ヶ月前から職場で知り合った女性と浮気していた彼は、そのことがばれていたと悟ると私をあっさりと切り捨てた。
しかもただ婚約破棄宣言をしただけではない。
私の悪いところを散々並べ、その果てに、目を剥きながら「お前みたいな女との婚約は破棄する」と言ったのだ。
浮気がばれたからといって人のことを悪く言うのは人としてどうかと思うが……。
ただ、それは結局、彼がそういう人間だったというだけのことなのだろう。
困った時にこそその人の本性が露わになると言う。つまり、昨日見たのがエリヴォッツの本性だったということだ。これまで見ていた彼は本当の彼ではなく、あんな風に心ないことを平気でする彼こそが彼の真の姿だったのだろう。
関係が壊れてしまったことは残念だ。
けれども後になって彼の本性に気づくよりかは良かったのかもしれない。
結婚してから彼の本当の姿に気づいても時既に遅しだから。
――ああ、また、新しい朝が来る。
どんな状況でも。
どんな出来事の後でも。
夜は明け、朝は訪れる。
それは絶対的なことだ。
ならば人もまたどんなことがあろうとも前へ進んでゆくのだろう――どのような心でいても、規則正しく刻まれる時が止まることはない。
◆
あれから一年が経った。
エリヴォッツはある女性とのデート中に交通事故で落命し、私は父の知り合いの人の紹介で知り合った男性と気が合ったために結婚の方向で話を進め始めている。
婚約破棄にすべてを奪われるなんて、そんな道は選ばない。
私は、私という人生をただひたすらに突き進み、いずれ必ず幸せを掴んでみせる。
◆終わり◆




