表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

544/549

貴方のその選択は多くの人たちを不幸にするのですよ? 分かっているのですか?

「お前さぁ、マジ要らねぇわ」


 婚約者ダーウィベルスがある日突然そんなことを言ってきた。


 彼の傍らには私の知らない女性がいる。

 砂糖を入れ過ぎたスイーツのように甘ったるい顔つきをした彼女は、嫌みまじりな表情をこちらへ向けてきていた。


「婚約、破棄するから」


 ダーウィベルスはそんなことを平然と言ってくる。


 ……でも良いのだろうか?


 私と彼の婚約は契約だった。

 二人が未来を誓うことで彼の部族は滅ばずに済んでいる。

 契約がある限り、諸事情により様々な国から命を狙われやすい彼の部族を我が国が護る――そういう話になっているのだが。


「本気で仰っていますか?」

「ああ」

「婚約が破棄になれば、我が国は貴方の部族を護ることはなくなるのですよ」


 冷静さを失わないよう意識しつつ尋ねてみたのだけれど。


「いいんだ! そんなこと、どうでもいい! 俺は彼女を、ミミだけを、愛している。だから! 俺はミミと共に生きてゆく!」


 彼の心は決まっていた。

 一切揺らぐことはなく。


 ――そうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。



 ◆



 あの婚約破棄の後、ダーウィベルスの部族は即座に隣国に狙われた。

 そしてあっという間に支配され。

 多くの命が散り、何とか生き残った者たちも酷い扱いを受け、部族は皆隣国の奴隷となることとなってしまった。


 ……やはり必要だったのだ、私たちの関係が。


 でも可哀想ではない。なぜならこちらが契約を破棄したわけではないから。必要だった関係を終わらせたのは向こうだ。だから、それによって彼らがどうなったとしても、我が国や私に非はない。もちろん、婚約破棄が部族の総意であったわけではないだろう。ただ、ある意味代表であった彼が関係を終わらせることを選んだのだから、そういう意味では自滅である。


 ダーウィベルスは戦いの中で捕らえられ処刑された。

 ミミは部族の者ではなかったがダーウィベルスと親しくしていたという理由で心ない扱いを受け最終的には落命させられてしまった。


 ……ああ、悲しいことだ、本当は避けられた悲劇だったのに。


 けれどもそれが彼の選んだ道なら仕方ない。


 すべてはダーウィベルスの選択の結果。

 ゆえに他の誰のせいでもない。

 不幸にも巻き込まれてしまった者たちが怨むべきは私たちではなくダーウィベルスその人だ。



 ◆



 婚約破棄から数年が経ち、私は、貴族の男性と結婚した。


 彼の趣味は釣り。珍しい趣味だったので最初は驚いたけれど、色々な話を聞いているうちに段々興味が湧いてきて。それについて話を聞いているうちに親しくなって、その流れで結ばれることとなった。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ