「どうして、こんな、こと……」その日私は知ってしまったのです――悲しい真実を。
「どうして、こんな、こと……」
その日私は知ってしまった。
婚約者である彼ラヴィンが長期にわたって浮気していたことを。
「あのさぁ。お前、自分が愛されるとか本気で思ってんの? はぁあ。ばっかだなぁ。お前みたいなやつが俺みたいな男にただ一人愛されるなんて、そんなことあるわけないだろが」
真実が明るみに出たその日、彼は、浮気相手を庇い、私に対して敵を見るような視線を向けた。
「俺は彼女を愛してる。それが真実ってこった。お前なんて婚約してるだけ、形だけに決まってんだろうが。なぁ? 勘違いすんな。俺が愛してんのは彼女だ」
「婚約している身で浮気するのは問題だと思います」
「はあ? 問題? あーあー、バッカだなぁ。なーに言ってんだお前は。お前はそんなこと言える立場か? さすがに自分の価値高く思いすぎだろ!」
彼は平然と私を傷つける言葉を発して。
「けど、ま、ちょーど良かったわ。お前との婚約は今この時をもって破棄な! おけぃ? 婚約は破棄! ……言ったからな? 伝えたからな! 後からあれこれ言っても無駄だからな!」
正式に婚約している相手である私を切り捨てた。
「ラヴィン、いいのぉ?」
「当たり前だろ」
「でもぉ……」
「俺が愛してんのはお前だけなんだから、あんなやつどうでもいい」
「うっふふぅ~ん! 嬉しい! ときめくゥ!」
二人はいちゃつきながら盛り上がっていた。
――しかしその後彼らは痛い目に遭うこととなる。
ラヴィンは浮気しておいて一方的な婚約破棄宣言をしたことが父にばれたために持っていたものすべてを失うこととなった。というのも、彼の父親は正義感の強い人だったのだ。父親は悪しき行いに手を染めた息子を許さなかった。父親はラヴィンを強く叱り、それから勘当を言いわたす。縁切りを告げ、遺産に関してもラヴィンには少しも与えないということをはっきり宣言。正義の人であった父親は悪しき息子に対して徹底的に罰を与えたのだった。
その後父親は私には謝罪してくれた。加えて、慰謝料も支払ってくれた。彼はどこまでも誠実だった。だからこちらとしても罪の意識を抱えてほしくなくて。どうか気にしすぎないでほしい、と、伝えておいた。
それから少しして、私は、ラヴィンの浮気相手からもお金を回収することに成功する。
ややこしい状況だが成功させることができたのは、何人もの協力者がいたからだ。両親、その知り合いの知識ある人、ラヴィンの両親、そういった人たちが協力してくれたからこそ、ラヴィンの浮気相手である女性からもしっかりと償いのお金をもぎ取ることができた。
◆
あれから数年、私は幸せを掴むことができた。
今は結婚している。
素敵な夫がいる。
彼はとても善良な人物で、どんな時も「一緒になれて良かった」と心から思わせてくれる人だ。
ちなみにラヴィンはというと、あのまま行方不明になったそうだ。
彼がどこに行ったのか。
その真実を知る者はどこにもいない。
そして彼の浮気相手だった女性はというと、あの後悪い男性に騙されて痛い目に遭うこととなったようである。
◆終わり◆




