ただ少し野良猫を可愛がっていただけなのに婚約破棄されてしまいました……。
その日、家の傍で出会った野良猫を可愛がっていたのだけれど、その姿を婚約者である彼ルツースに見られてしまい。
「お前! 何をしているんだ!」
「何って……野良猫と遊んでいます、けど」
「最低だな!」
「ええっ」
「サ! イ! テ! イ! だ! そんなきったねえのと関わりやがって。お前は魔女か! ああそうか、分かった、気づいたよ、お前は魔女だったんだな」
前々から思い込みが激しめのルツースは、今もまた自分が思ったことがすべてであるかのように思い込んでいて、私の言葉なんて少しも聞こうとしてくれず。
「野良猫と関わるなんて魔女に違いない。ではもうここまでだ! お前との婚約は破棄とする! ……だって俺には魔女と生きることなどできないんだ。俺は偉大だから! だ! ではな、さよなら」
ルツースはさらりとそんなことを言って関係を叩き潰した。
◆
あの後ルツースは亡くなった。
いろんなところで魔女を絡めた私の悪口を言っていたところ本物の魔女に聞かれてしまい、怒った魔女に石になる魔法をかけられてしまったのだとか。で、石になったルツースは魔女に砕かれ、そのまま消滅した。
あまりにもフィクション的な展開だが、どうやら本当の話であるようであった。
ちなみに私はというと。
婚約破棄された数日後、あの時可愛がっていた野良猫がやって来たと思ったら、その野良猫が美しい魔法使いの女性に変身して。女性は戸惑っていた私に魔法をかけた。富の魔法を。それは、生涯豊かであれる、という特別な魔法。
それによって大金持ちになった私は、穏やかな日常を手に入れ、生涯何の苦労もせず生きることができたのだった。
◆終わり◆




