あるものを食べていたら婚約破棄されました……。~彼の最期は呆気なく~
ある日、異国の名産品であるちりめん山椒を食べていたら、婚約者ルルオが物凄く不機嫌そうな顔をしたうえ婚約破棄を告げてきた。
「お前なんてもん食ってんだ! きたねぇ! きたねぇんだよ女のくせに!」
「なぜそんなに怒るのですか」
「そりゃあ怒るだろ! 誰だってよ! お前、女のくせに、そんな臭いもん食ってんだぞ!?」
「これはおかしな食べ物ではありません。少々独特のスパイス感はありますけれど、でも、とても美味しいものです」
ルルオはこれまでに見たことがないくらい怒った顔をしている。
「きたねえんだよそんなもん食って喜んでるとか! おっさんかよ! きたねぇな、心も口も!」
こうして婚約は破棄となった。
◆
ルルオはあの後酒場で知り合った出自不明の怪しい女性に貢がされ借金を抱えることとなってしまったようだ。そして、返済ができなかったために、怖い人たちに誘拐されて。内臓を抜かれ売り飛ばされ、その他の部分は山に捨てられたそうだ。
彼の最期は呆気ないものだった。
誰にも愛されず。
誰にも見守られず。
物のように、ごみのように、扱われてこの世を去る――それはきっととても悲しいこと――しかし生前の彼の心ない部分を知る私からすれば正直ざまぁみろとしか思わない。
理不尽なことで怒り出し、人格そのものを否定したような、そんな男だ。
そんな人がどうなろうが同情など欠片ほどもない。
ちなみに、私はもう未来のための活動を開始している。
それは次なる縁を得るための活動だ。今度こそ良き結婚相手を見つけたい、そう思って動き出している。
そして、幸運なことに、徐々にだが成果も出てきている。
冷静さを欠かないよう気をつけつつこのまま活動を続けて今度こそ明るい未来を手に入れたい。
◆終わり◆




