婚約破棄されても、好き、を抱き締めて歩みます。~なんだかんだで幸せになれました~
子どもの頃から植物が好きだった。
なので色々育てていた。
しかしそれゆえ「女の子らしくない」と批判的な言葉をかけられてしまうことも少なくはなかった。
そして、ある程度の年齢になってできた婚約者ヴォーデーンも、そういった人たちと同じように私の好きを批判的に捉えていた。
「趣味が変な君とは生きていけない。よって、婚約は破棄とする」
ヴォーデーンはある日突然そんなことを言ってきた。
「婚約破棄、ですか」
「ああそうだ」
「趣味が変、なんて……そんなことを言われては、非常に不快です」
「だからこそおしまいにしようと言っているんだ」
「そういうことですね」
暫し、沈黙があって。
「君とはもう二度と会うことはないだろう。……ではな。さらばだ」
その果てで彼はそれだけ言った。
あまりにもあっさりした関係の終わり。
けれどもそれはある意味仕方のないことだったのだと思う。
私と彼とでは価値観が大きく異なっていた。
……だから仕方ない。
◆
ヴォーデーンに婚約破棄されるという思わぬ形で自由を得た私は、植物に向き合う時間により一層打ち込むようになり、結果、ある種の植物から入手できる新たな成分を発見することができた。
まだ誰も見つけたことのない成分。
しかも人体に対してかなり良い効果のあるもの。
それゆえ、発見者となった私は高く評価され、国王からの表彰までも受けることとなった。
好き、を、追及してきた。容易いことではなかった。嫌なことを言われたり、冷たい目で見られたり、山あり谷ありで。それでも、好き、を抱き締めて歩んできて。それでようやくこうして光ある場所へとたどり着くことができたのだ。
◆
あの世紀の発明から一年半。
私は国王からの頼みで彼の子である王子と結婚することとなった。
はじめは王子などという高貴な人が私に心を向けることなんてあるはずがないと思っていた。けれどもいざ関わってみると、思っていたより良い感情を向けてもらうことができて。王子も人外ではなかった。王子といっても人は人、だったのだ。
おかげで私は幸せになることができた。
愛し、愛され、希望ある道を歩む――それが私の人生だった。
ちなみにヴォーデーンはというと、あの婚約破棄の後少しして不治の病にかかってしまいそのまま亡くなってしまったそうだ。
◆終わり◆




