悪い意味で自己中心的な母は勝手に滅んでいきました。……ざまぁですよ、本当に。
私の母は悪い意味での自己中心的を絵に描いたような人だ。
そしてすぐに不機嫌になる。
そういう時の彼女は幼稚の極みである。
母は外面は良い方だ。しかしひとたび不機嫌になると人格が豹変。あれしろこれしろとやたらと命令してくるようになり、物を置くという行為でさえバァンと大きな音をわざと立て、娘である私に対しては暴言を吐く。
……まぁ、外面のいい人というのはそういうものなのだろうが。
とはいえ。
いちいち絡まれるのは面倒臭い。
「これ、出してこい!」
「ゴミね」
「遅い! はよ出せ! もたもたすんな、脳ないんか!」
「はい、行ってきます」
私に婚約者ができてからはより一層不機嫌な時間が増えた。
どうやら私が幸せなのが気に食わないらしい。
「出した? じゃあ次! いちいち遅い! さっさとせえよ!」
「そっち行きます」
「これ洗え! 洗ったら干せ! すぐ! 遅い遅い遅い!」
「はい」
――そんな母はある日突然勝手に私と婚約者との関係を壊してきた。
「ダヴィスとの婚約、破棄ってことにしてきたから」
「え」
「あんたみたいなやつダヴィスには似合わない。それに、ダヴィスと一緒にいてもあんたは幸せにはなれない。だから婚約破棄した、それだけ」
「それは……さすがに勝手過ぎない?」
「うるさい! 黙れ! 口ごたえすんなアホ! 誰に向かって言ってんのか分かってんの!? なあ!?」
やはり母は私と婚約者ダヴィスの関係を良く思っていなかったようだ。
「取り敢えずダヴィスのところへ行ってくる。で、話をするから。悪い意味で自己中心的な母さんの好きにはさせない」
私は家を出た。
大切なものを護るために。
「そういうことだったんだ!」
「ごめんダヴィス……」
「いきなり言われたから驚いたよ。でも大丈夫。君がそう言ってくれるなら、僕は君の言葉を信じるから」
事情を説明すると、彼は理解してくれた。
「ありがとう。……ごめんなさいね、今回は」
「いやいや、いいんだ。君から本当のことを聞けて良かった」
「これからもよろしく……って、言っても構わない?」
「もちろん!」
「嬉しいわ。ありがとう。じゃあ、改めて、引き続きよろしくね」
こうして私と彼の関係は無事保たれた。
先日のことは母が勝手にやったことだった、という事実を、周囲の人たちが理解してくれたのが一番ありがたかったところだ。
この件に関わっていた人たちは誰も私を責めはしなかった。
だからこそ私は彼との道を真っ直ぐに進むことができた。
ダヴィスにも、そのご両親にも、もう本当に感謝しかない。
結婚後少しして母の死を知った。
何でも彼女は夫に浮気されていたそうで。
その事実にショックを受け。
しばらく体調を崩していたそうだ。
そんな最中に起きた夫婦喧嘩の中、母は相変わらずヒステリックに怒っていたそうなのだが急に気分が悪くなり倒れ――そのままあの世へ逝ってしまったのだそう。
……ま、自業自得か。
彼女はこれまで好き放題生きてきた。周囲の人、特に家族のことは、奴隷であるかのように扱っていた。娘だって人間だ、それなのに彼女は娘を人間と認めていなかった。
だから天罰が下ったのだろう。
悪い意味で自己中心的な生き方をしてきた母がどうなろうが知ったことではない。
◆終わり◆




