純白の幸せを掴みます。~過去のことなど捨てていきましょう~
私にはかつて婚約者がいた。
しかし彼は他の女性と親しくなり浮気してしかも私に対して一方的に婚約の破棄を突きつけた。
しかもその理由が理不尽極まりないもので。
こちらには非はないではないか、と、文句の一つでも言ってやりたくなるようなものだった。
浮気という裏切りを平気で行い、心ない言葉を吐いて、身勝手に婚約を破棄する――そんな彼は他人を傷つけることを何とも思わない人物だったのだ。
だがそんな彼には天罰が下った。
ある時同性の友人に頼まれて街中で一人の可愛らしい女性に声をかけたそうなのだが、女性に声をかけたちょうどそのタイミングで怖い男の人が出てきて、激怒している様子の男の人に「許してほしけりゃ金出せや!」と脅されたらしく。さすがに怯んだ彼は持っていたお金すべてを怒る男の人に渡したそうなのだが、後に、きっかけを作った同性の友人と可愛らしい女性と怒っていた男の人とが実は仲間だったことが判明したそうで。
お金を失い、友に裏切られ、と、散々な目に遭った彼は、自身がこの世に存在しているということそのすべてに絶望したらしく。
ある日の夕暮れ時。
ふらりと家から徒歩十分ほどの崖へ向かい。
そしてそこから飛び降りたのだそうだ。
◆
純白のドレスを身にまとい、愛する人と見つめ合う。
目の前にいる彼は高貴な人。
印象だけではない。
真の意味で高貴な存在――この国の第一王子――それゆえ、私たちの結婚式は盛大に執り行われる。
もうすぐ夫となるその人は、いずれ、この国を治めることとなるだろう。
そうすれば妻である私も国の頂に立つこととなる。
……きっと、これから先、いろんな苦労があるだろう。
けれども私は負けはしない。
たとえ何があったとしても。
愛する人と共に歩めるなら、怖いことなどありはしない。
◆終わり◆




