今があるのは彼のおかげ? ある意味感謝、ですね! ~ティータイムは平穏の中で~
「美味しいわね、この紅茶」
「うちの親がメリアの好みに合うんじゃないかって言って贈ってくれたんだ」
「素敵なご両親ね。それに、私の好みも知ってくれているだなんて嬉しい。とても優しい方々だわ」
私メリアと目の前にいる彼ルダヴィンは既に結婚しており、正式に夫婦となっている男女だ。
かつて私には別の婚約者がいた。
その名はダッダ。
そこそこ良い家の子息ではあったのだが、素行はお世辞にも良いとは言えず、婚約期間中でも何の躊躇いもなく浮気行為を繰り返すような人だった。
ある時私が会話の中でそのことについて触れたために彼は激怒、そのまま婚約破棄を言いわたしてきて――そうして私たちの関係は終わった。
「好みに合ったかな?」
「ええとても」
「なら良かった。親にもそう伝えておくよ。いいかな」
「もちろん。お礼をお伝えしてもらえれば嬉しいわ。……本当は私から直接伝えるべきなのだろうとは思うのだけれど」
「いいよいいよ、大丈夫。気遣いは要らないよ」
ダッダに婚約を破棄された時、私は酷く落ち込んでいた。
彼を愛してはいなかったけれど。
それでも一方的に切り捨てられたことは辛かったのだ。
だが、そんな時に、ルダヴィンが現れて。
泣いてばかりいた。
強くなれなかった。
そんな情けない私に寄り添い支えてくれた。
「こっちから伝えておくから」
「ありがとう」
そして私はルダヴィンと共に生きてゆくことを決意。
辛いことや悲しいこと、色々あったけれど、それらがあったからこそ今こうしてルダヴィンと穏やかに生きられている――そう思えば、ダッダの存在も無意味なものではなかったのかもしれない。
「あ、あとさ、これもあるんだ」
「今出してくる?」
「ごめんごめん。出すならもっと早く出すべきだったよね。タイミングが悪かった……で、クッキーなんだけど」
「クッキー!」
「これは僕が買ったからセンスなかったらごめん」
「見せて? ……美味しそうじゃない!」
ダッダが余計なことをしてくれたからこそルダヴィンに出会うことができた。
「食べてみていい?」
「もちろんだよ」
「じゃあいただくわね。……ああ、とっても美味しい! センス最高!」
「ほっ」
「とってもとっても素敵なクッキーね!」
ちなみにダッダはというと、私と別れた後他の女性と婚約するもまたしても婚約期間中にやらかしてしまったそうで激怒した女性の父親に殴られ落命してしまったそうだ。
◆終わり◆




