十六年上の婚約者が……? ~結局最期まで彼はよく分からない人でした~
「お主、わしとは無関係になってくれ。……ということで、婚約は破棄とする」
十六年上で婚約者でもある彼ロージーン・ヨリトシがある日突然そんな言葉をかけてきた。
「え」
「聞こえなかったのか? 婚約は破棄、と言ったんだ」
ロージーンは馬鹿にしたような表情を滲ませた面を見せつけてくる。
「いえ、そうではなくて、ですね……意味が分からないんです、なぜいきなりそんなことを言われるのかと」
「ほう」
「耳が遠いわけではありません」
「ほうほうほううん」
目の前の彼は明らかに意図的に挑発的な声の出し方をしていた。
「だが、そんなことはどうでもいいこと」
「……なぜ」
「そもそも、すべての決定はわしがするもの。ゆえに、お主が理解できようがでいまいが関係ないのだ。わしが決め、わしが告げる。すべての決定はそれが正しい形なのだから」
自分勝手の極みのような彼は。
「ではな。さようなら、ほっほほほっほ」
一方的に別れを告げ私を切り捨てたのだった。
◆
あの後少ししてロージーンは寿命を迎えたらしい。
……いや、本当に寿命だったのかは不明だが。
ただ、表向きには、一応そういう発表となったようである。
ちなみに、彼の最期の言葉は「もっと女たくさん作れば良かったな、残念。ふぉっふぉふぉふっふぉ」だったそうだ。
それを聞いた時、最期まで意味不明な人だったな、とは思ったけれど……それ以上のことは特に何も思わなかった。
その後、私はロージーンではない年の近い青年と結婚し、幸せになれた。
◆終わり◆




