婚約破棄されたうえ崖から突き落とされるなんて思いませんでしたよ……。~天罰はしっかり下ったようですね~
婚約者である彼ヴィーヴァヴァから突如婚約破棄を宣言され戸惑っていたある日の夕暮れ、私は家の近くの崖付近にて一人の女性に襲われる。
「あ」
背後から突き飛ばされて。
身体は宙へ。
地面のないところへの身が飛んでいく。
「うふふ。ヴィーヴァヴァさまはあたしのもの。あんたはとっとと消えてちょうだい? 鬱陶しい、か、ら」
死の直前、私は私を突き落した者の顔を見た。
――女性はヴィーヴァヴァの浮気相手であった女性だった。
「さようなら~、うふふ」
ああ、そうか、婚約破棄だけでは終わらなかったのか……。
「あの世で楽しくね?」
そのまま私は崖から転落し亡くなってしまったのだった。
どうしてこんなことに……。
なぜ私がこんな目に遭わなくてはならないのか……。
ただひたすらのもやもやしながら、私はこの世を去ることとなった。
◆
死後の世界にて。
『貴女は生前苦労なさいましたね』
「はい……」
『婚約者に浮気され、婚約破棄され、浮気相手に殺められ――でしたね』
「そうなんです」
女神は私が見舞われた災難を知ってくれていた。
誰も知らないと思っていた。
誰にも知られることはないと思っていた。
だからこそ、一人でも私の苦労を知ってくれている人がいて嬉しかった。
『安心してください。罪深き彼らには、我ら神が必ず天罰を下します』
「ほ、本当ですか?」
『もちろんです。罪を犯した悪しき者を放置するなどそのようなことは決してありませんよ』
「……ありがとうございます。こんなことを言ってはいけないと分かってはいるのですが……ホッとしました、嬉しいです」
その後ヴィーヴァヴァとその浮気相手の女性には本当に天罰が下った。
女性と婚約したヴィーヴァヴァだったが、ある朝女性が過去付き合っていたらしい男に殺害されてしまい、絶望の海に堕ちることとなる。心を病み、体調も崩し。ヴィーヴァヴァは穏やかな日常を失った。
さらにヴィーヴァヴァは詐欺師に騙され資産も失うこととなってしまう。
持っているもの、大切なもの、そのすべてを失ったヴィーヴァヴァ。
彼に残ったのは絶望しかなく。
暗闇に耐えられなかった彼は自ら死を選んだ。
――そこまで見届けて、私は転生の輪へと帰った。
◆
生まれ変わった私は幸せそのものだった。
裕福な家に生まれ。
常に寄り添ってくれる両親に恵まれ。
友人も多く。
そして、何よりも、大変善良で思いやりのある男性と婚約者同士になることができた。
あの時の不幸な目に遭った分だけ、今世の私は幸せに生きることができている。
この人生は最高!! ――迷いなくそう言える。
◆終わり◆




