婚約破棄された帰り道、一人道を歩いていたところ、謎の大型犬に遭遇しまして……?
婚約者である男性ボバートに心ない言葉をかけられたうえ婚約破棄された日の実家への帰り道。
とぼとぼと歩いていたら向かいから一匹の犬が現れた。
長い毛の生えた大型犬。
柔らかなクリーム色の毛には艶がある。
その犬は私の正面まで歩いてくると足を止めた。光を宿した鋭い瞳がこちらをじっと見つめてくる。襲われるかもしれないと内心焦っていると、その身をすり寄せてきた。安堵する。一旦息を吐き出すことができた。
それから少しして、まるで「ついてこい」とでも言っているかのような視線を向けられる。
私は一度だけ頷いた。
そして進行方向を変えて歩き出す犬を追うように足を進める――まるで何かに導かれているかのようだった。
やがて犬は止まった。
そして穴を掘り始める。
――そうして現れたのは金塊の山。
「え……何、これ……」
露出した金塊に触れてみる。
特に不自然さはない。
単なる金塊といった感じの触り心地だ。
その後、私は金塊を回収し、販売した。
それによって大金持ちになった。
おかげでそれからの生活は穏やかなものとなったのであった。
両親と共に平和に暮らせる日々は幸せそのもの。
ちなみにボバートはというと。
私との関係を終わらせた日から数日が経った頃のある日の散歩中に謎の大型犬に襲われて落命したそうだ。
謎の大型犬って、もしかして……。
そんなことを思いはしたけれど。
ややこしい話になってしまっても問題なのでそのことについては誰にも何も言わないでおいた。
私はこれからも穏やかに生きてゆく。
彼との辛かったことなど振り返らず。
今在る幸せを大切にして歩んでゆくつもりだ。
空が澄んでいること。
眩しい日射しが降り注ぐこと。
楽しい会話ができる人が傍にいること。
そんな、一つ一つの小さな幸せを抱き締めて、歩んでゆきたい。
◆終わり◆




