四十歳差の婚約はなかなか上手くいかないですよね。しかも無理矢理のものであればなおさらですよね。
「君との婚約じゃが、破棄とすることとしたのじゃ」
四十歳年上の婚約者ロージィがある日突然そんな宣言をしてきた。
ロージィと私とはかなりの年齢差がある。親子かそれ以上といったくらい。普通に考えれば私たち二人は結婚するような年齢ではないのだ。夫婦になる、なんてことは、普通はない年の差。
だがロージィが私の両親に大金を支払ったことによって私は彼と結婚することになった。
お金の力は凄まじい……。
それこそどんな大きなものでも動かしてしまえるほどなのだから……。
けれどもそんな風に無理矢理始まった関係は上手くは続かず。
「わしゃもっと美人でトークスキルのある女性が好きなんじゃ。君は良いのは見た目だけ。それも、それなりに、という程度。つまり、わしにとって理想的な女性ではないのじゃ」
「そうですか」
「なので、わしは妥協するのはやめたんじゃ!」
「分かりました」
「もっと美人、もっと性格良し、もっと話が面白い――そう言う女性こそがわしに相応しい女性なんじゃよ!」
こうして驚くような年の差の婚約は破棄となった。
その翌日ロージィは亡くなった。
彼はその日珍しく早朝にお風呂に入ったそうなのだが、途中で食べようと思いつつまだ食べられていなかったつまみのことを思い出して、身体を洗うことを急いで終わらせて走って外へ出た。
すると急にくらりときて。
めまいのような何かに襲われて。
――で、そのまま倒れ、意識不明に。
結局彼は亡くなったしまったのであった。
彼の最期は呆気ないものだった。
お金に物を言わせて多くのものを手に入れてきた彼だったけれど、長い命だけは手に入れられなかったようだ。
◆
あれから数年。
私は今とても幸せに暮らしている。
温かな人と出会えたために家庭を持つことができ、また、その人はとても料理上手なので毎日美味しいものを食べて生活できている。
私はとても恵まれていると思うし幸せ者であるとも思う。
なので私はこれからもこの場所を大事に守りながら生きてゆきたいと考えている。
◆終わり◆




