婚約破棄される日はいきなりやって来ました。~彼の最期は誰も知りません~
婚約者ローンガン・パパ・ラパパ・トトッタ・パパラパラパトッタタラはある日いきなり関係の終わりを告げてきた。
「君とはもうこれ以上やっていけない」
彼はさらりとそんなことを言った。
信じられないくらい冷ややかな目をして。
「だからここまでだ。さよなら」
――そうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
婚約破棄を告げられた日から三日が過ぎた昼下がり、山の方へ出掛けたローンガンが帰ってこないという情報が流れてきた。
捜索隊は昨日から出ているそうなのだが、それでもなかなか見つからないようで――実質、行方不明、というような感じらしい。
ローンガンの身に何があったのだろう?
よく分からない。
いつも行っていた近場の山であるなら遭難というわけでもなさそうだし。
……だが、一つ確かなことは、恐らく生きてはいないだろうということだ。
一人で山へ入って帰ってこなくなった人間が無事生きているとは考え難い。いや、もちろん、時にはそういう幸運な事例もあるのだろうけれど。ただ、それを期待するというのは少々無理がある。なんせそのようなことは滅多に起こらないこと、奇跡だから。
「――なんてことがあったのよね」
「そっかぁ……それは怖いなぁ、かなり……」
あれから何年経っただろう。
私には生涯を共にする相手ができた。
「それで、そのローンガンっていう人は、亡くなってしまったのかい?」
「発見されなかったから」
「亡くなったという扱いに?」
「ええ、そうみたい。一定期間行方不明のままだったから……」
ローンガンの最期、その真実を知ることは、きっと誰にもできない。
だがそんなことはもはやどうでもいいことだ。
◆終わり◆




