婚約破棄されましたが、その後わりとすぐに他の人から想いを告げられるという展開が待っていました。
私にはつい先ほどまでウィイーグルスという婚約者がいたのだが。
「ずっと昔、まだ十歳にも満たなかった頃、貴女に命を救われました。それからずっと貴女のことが頭から離れず今に至っています。どうか、どうか……僕と共に歩む道を選んではくださらないでしょうか? お願いします」
その彼に婚約破棄を告げられた、直後、偶然出会った一人の男性から想いを告げられた。
「え、と……すみません、まだ状況が理解できていません」
「この後お話だけでもどうでしょうか」
「それなら大丈夫です、喫茶店にでも入りましょうか」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「はい。……では」
こうして巡り会った彼は領主の息子であった。
その人の熱い想いに押され私は彼との道を選ぶことにした。
――そして数年。
「おはよう!」
「あら、もう起きていたのね」
「今日はちょっと……日頃のお礼に、と思って、勝手だけど紅茶を淹れてみたんだ」
「そうなの!?」
「驚かせてごめん。あと、迷惑だったら……それも、ごめん」
「いえ、そうじゃないの。嫌だとか迷惑だとかそういうわけじゃないのよ。ただ驚いただけで」
私は今も彼と幸せに暮らしている。
「じゃあ持ってきてもいい?」
「ええ、もちろん」
領主の息子である彼とは夫婦になった今も仲良し。
絆は永遠のもの。
自信を持ってそう言えるほど。
「お待たせ」
「ありがとう」
「日頃あまり淹れてないから……上手くなかったら、ごめん」
「気にしないで。あ、でも、何だかとっても良い香りね」
「口に合うといいな」
「飲んでみるわね」
ちなみにウィイーグルスは、もうこの世にはいない。
彼はあの後一人の女性にそそのかされ始めた事業で大失敗、かなり大きな額の借金だけが残る形となったそう。
で、借金返済に追われた挙句、最終的には自ら死を選ぶこととなってしまったのだとか。
私との婚約を破棄する時、彼は「お前といるから俺は社会的に成功できないんだ」などと失礼なことを言ってきていた。
しかし彼は私と離れても成功できなかった。
ということはつまり、彼が言っていたことは間違いだったということになる。
彼の人生が上手くいかなかったのは私のせいではなかったのだ。
結局彼は色々上手くいかない状況の原因を私に押し付けていただけだったということである。
◆終わり◆




