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二十二歳なのに独特の口調で喋る婚約者に切り捨てられてしまいました。しかし彼はその後間もなく……。
「お主との婚約は破棄とするぞよ」
婚約者オッシリヤァ・ワシガトップはある日突然そんな宣言をしてきた。
「わしに相応しい乙女とはお主ではない。よって、お主とはここまでとする。わしはより良い未来のためにより良い乙女を選ぶことに決めたのだ。ということで、さらばじゃ」
実年齢は二十二歳の彼だが、昔から口調にはこだわりがあるそうで、彼は長年こういった謎の多い喋り方をしている。
「永遠に、さらばじゃ」
こうしてオッシリヤァは二人の関係を一方的に終わらせたのだった。
◆
婚約破棄された日から一週間。
私のもとに届いたのはオッシリヤァの訃報であった。
彼はあの後少しして家の階段からうっかり転落してしまったそう。で、そのままあの世へ逝ってしまったのだそうだ。
あまりにもあっさりとした最期であった。
より良い未来のために私を切り捨てた彼がまだ二十代前半という若さでこの世を去ることになるとは……皮肉なものだ。
◆終わり◆




