婚約破棄されましたが神に見初められました。なので私は神と生きる道を選ぶことにしました。
婚約者に理不尽な理由で切り捨てられた翌日、私はこの国を統べる神に見初められた。
そして神の国へ行くことに。
もはや驚きと戸惑いしかない状態だったのだが、だからといって断ることもできず、流されるがままに神と共に行くこととなった。
「トランプをしようぞ」
「は、はい」
「では順に配る」
「あの……」
「何か?」
「実は私、その……苦手なのです」
「トランプ遊びが、か?」
「はい。婚約破棄されたのも、それが理由だったんです。私があまりにも弱いから、彼を不快にしてしまって……。馬鹿にしているのか、と怒られて。それで……婚約破棄になってしまった、それほど私は弱くて」
今はまだ馴染めていない。
こんなことになるなんて欠片ほども想像していなかったから。
「気にすることはない」
「……そう、でしょうか」
ただ、それでも、この道を選んだのは私だ。
一度選んだ道なら。
迷わず突き進むしかない。
「我はお主のトランプの弱さなどで怒る気はない。ゆえにお主は何も気にすることはないのだ」
「すみません……」
「それに、そもそも、トランプが弱いということは悪いことではないだろう? 勝ちを相手へ譲っているだけなのだから。悪いことをしている、どころか、良いことをしている、だろう? それを責める者がいるならその者が間違っているのだ」
だから私は神と生きる。
いつまで続くか分からないけれど。
でも選んだ道は選んだ道。
それは変わらない。
ならば、私は、できる限りその道を選び続ける。
◆
あれから千年、私は今も神と共に生きている。
今日に至るまで本当に色々なことがあった。けれどもどんなことも乗り越えられた。それはきっと神がいたから。神が傍にいてくれたから、支えてくれたから、今日に至るまで選んだ道を真っ直ぐに歩み続けることができたのだ。
ちなみに元婚約者の彼はというと。
めでたい三十歳の誕生日、神から罰を下され、呆気なく落命した。
◆終わり◆




