ある平凡な晴れた日、まさかの出来事が起こりました。〜幸せを掴めて嬉しいです〜
ある平凡な晴れた日。
家の前で掃除をしながらのんびり風を浴びていたら、婚約者である青年ラ・ンボス・トルスが凄まじい勢いで駆けてきた。
そして私の前でぴたりと足を止める。
彼の額には透明な汗の粒が数え切れないほどたくさん浮かんでいた。
「こんにちは、トルスさん」
「伝えたいことがあって来たんだ!」
「何でしょうか」
「お前との婚約、破棄することにした!」
告げられたのはまさかの言葉で。
「え……」
「だ! か! ら! 婚約破棄ッ!!」
「ま、待ってください。あまりにも突然過ぎます。どうしてそんなことに……」
「俺が決めたからだッ!!」
「ええっ」
「俺が決めたらそれはもう決まったことなんだ! 分かるか? 決まったことなんだよ! な! だから決定! 決定決定決定決定決定ッ!!」
こうして私は意味不明かつ理解不能な形で切り捨てられたのだった。
後に知ったことだが、噂によれば、トルスは友人たちに「あいつにはもう飽きた」とか「さくっと切って乗り換えよーっと」とか言っていたらしい。
呆れてしまう……。
何という愚かな思考だろうか……。
とはいえ、冷静に考えてそんな人と生きてゆくのは不可能なので、そういう意味ではここで離れておく方が良いのかもしれないと段々思えるようになったのだった。
◆
あれから二年、私は親の紹介で知り合った若き領主の青年と結婚した。
彼はとても誠実な人で優しい。
なので一緒にいられてとても幸せだ。
一方トルスはというと、あの後女性関係でやらかしてしまったようだった。
というのも、私の次に婚約した人がいたにも関わらず他の女性と深い仲になっていたそうなのだ。
で、ある時それが婚約者にばれて。
もちろん婚約破棄になり、しかも婚約者にその話を言い広められてしまったそうで、それによって彼は社会的に終わったそうだ。
……ま、そうなるだろう。
彼自身が浮気したのだから彼自身が悪い。すべてトルスの悪しき行いが招いたことだ。自業自得というやつである。
◆終わり◆




