あの、それは……正直意味が分かりません……。~急に鼻が無理と言われ婚約破棄されました~
「オレさ、お前の鼻ムリ」
婚約者ロッグがいきなり言ってきた。
それは平凡な午後。
二人でお茶をしていた時だった。
「え……」
「我慢してきたけど、やっぱムリ」
私の家、正しくは実家だが、その中庭で二人でお茶をする。それはもう何回目かのことだ。初めてのことではない。
それが証明するように、これまで私たちの関係は順調だった。
だからこそ容姿を否定するようなことを言われて驚いた。まさかそんなことを思われていたなんて、と。想定外だったのだ。
「またどうして……そんな、急に……」
「本音言っただけ」
「けど、そういうことなら、もっと早く言えば良かったじゃない」
「我慢してきたんだって」
「そんなこと今さら言われても……」
「お前の鼻ムリ」
「何回も言わないで! もうやめて、分かったから!」
すると彼は言う。
「お前との婚約は破棄する。決めた。……じゃあな、そういうことで、さよなら」
それはあまりにも突然な別れの挨拶だった。
◆
あれから二ヶ月。
私はロッグではない男性と親しくなり、今はその人との未来を考えている。
ロッグと別れることになったこと。
新しい人生を生きることを選んだこと。
すべて後悔していない。
ちなみにロッグはというと、今はもうこの世にはいない。
というのも彼は婚約破棄を告げてきたあの日の三日後に自宅の庭で謎の鳥の群れに襲われたらしく、驚いた拍子に足を滑らせて傍にあった木の幹で頭を打ってしまい、それによって落命したのだそうだ。
◆終わり◆




