まさか魔法をかけられてしまうなんて! ~しかし結果的にはラッキーでした~
ある朝、婚約者である彼ツッツントットスに呼び出されて彼の家へ向かったところ、彼一人だけではなく見知らぬ女性にも待ち構えられていた。
「来たな」
「えと……これはどういうことですか? ツッツントットスさん」
尋ねてみるがすぐに答えはもらえず。
「待ってたわよ」
「貴女は一体……」
「あたしツッツントットスに愛されてる女。もう分かるわね? あんたみたいなのはツッツントットスには相応しくないってこと」
ツッツントットスの隣にいる女性は高飛車に鼻を鳴らすといきなり杖を取り出した。
「女として終わってもらうわ!」
そうして彼女は私に魔法をかけた。
……それは信じられないような内容の魔法。
対象者を耳から謎キノコが無限に生えるといった奇病にする、そんな悪質な魔法であった。
「うふふ、上手くいったみたいね」
「これは……」
「キノコが生えるのよ。そういう魔法、ってこと。もう分かったかしら? あたしが言いたいこと。分かったなら、すぐツッツントットスの前から消えなさい」
女性は勝ち誇ったように嗤い。
「お前のようなキノコが生える女なんざ要らん。キモイ。よって、婚約は破棄とする」
婚約者である彼までも冷ややかな目を向けてくる。
「去りなさい、愚かな女」
「消えろよとっとと」
……こうして私はツッツントットスに切り捨てられてしまったのだった。
あれから二ヶ月。
キノコが生える奇病は治らなかったけれど、その代わりに、この身に生えてくるキノコが非常に高級品とされているキノコであったことが判明した。
そこで私はそれを売り物とすることに。
その結果大金持ちになることができた。
恐らくツッツントットスらは気づいていなかったのだろう、このキノコが高級なキノコであることには。
無限に生えるキノコ。しかしそれはかなり高額で売れるもの。そうなれば無限にお金が稼げる。何もしなくても金が湧いてくるようなものだ。
……あの女性には感謝しなくては。
婚約破棄から五年。
王子と結婚した私はこの国の未来の王妃となっている。
キノコは今も生えてくるけれど、国の経済状況を良くするためになっているから、そういう意味ではこの体質も悪いことばかりではない――今は純粋にそう思えている。
それに、周囲の人も体質を理解してくれているので、辛いことは一切ないのだ。
温かな空間で生きていれば辛いことなど生まれはしない。皆からの優しさに包まれているから。怖いことなどありはしないし、どんなことも前向きに捉えて歩むことができる。
ちなみにツッツントットスはというと、いつだったか忘れたが、子どもが五十人くらいで協力して掘った落とし穴にはまって転落し負傷しそれが原因となってこの世を去ることとなったそうだ。
◆終わり◆




