「貴様との婚約は破棄とする!」その日は突然やって来ました。~妹に騙されているのではないですか~
「貴様との婚約は破棄とする!」
その日は突然やって来た。
「貴様、我が妹を虐めていたそうじゃないか!」
「え……」
「どうした? 馬鹿みたいな顔をして。悪事がばれて何も言えないか! はは! そういうことだな? そういうことだな!」
意味が分からない。
私は何もしていないのに。
「まさか貴様がこれほどまでに悪女だったとはな」
「待ってください」
「は?」
「私は妹さんを虐めてなどいません」
「……は、はは。今になって否定、か。馬鹿め! 信じるわけがないだろう! 今さら言ったところで手遅れだ!」
婚約者リットバーグは馬鹿にしたような色を帯びた面持ちで豪快に笑う。
「我が妹と貴様、どちらが正しいかと言えば、それは当然我が妹だろう!」
「何かの間違いです。私は何もしていません。ましてや虐めるなんて。そんなことをするはずがありません」
「知るか! 貴様が何を言おうが無駄だ。なぜなら聞く価値がないから! それだけ! ではな、婚約は破棄とする」
こうして私と彼の関係は理不尽な形で壊れてしまったのだった。
――その日の晩、リットバーグの妹が何者かに刺され亡くなってしまう。
何でも、彼女は他のところでも婚約を壊す活動をしていたらしく、その中の一件に関係していた男性に刃物で襲われ落命することとなったのだそう。
それによってリットバーグはようやく妹の本性を理解したようで。その時になって彼は私のところへやって来た。そして泣きながら「やり直してほしい」とか「騙されていたんだ、こちらも被害者なんだ」などと言ってきた。けれども、何を今さら、といった感じだったので、私は拒否した。謝罪だけは一応聞くだけ聞いたけれど。それ以上関わるつもりはなかったから、やり直すとか何とかといった話はすべて断った。
以降、リットバーグは心を病み、家から出られなくなってしまったそうだ。
けれど私には何の関係もないこと。
なので彼がどうなろうが私としてはどうでもいい。
さようなら。
……それ以外に思うことはない。
◆
あれから三年、私は領主の息子である男性と結婚した。
夫の仕事の手伝いもあり今は毎日忙しいけれどだからといってそれが嫌かと言えばそんなことはなく、むしろやりがいを感じつつ楽しく過ごせている。
これからも夫を支えつつ生きてゆけたらと思っている。
◆終わり◆




