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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


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辛い時に思い出すのはいつだって貴方でした、でもまさか……。

 辛い時、いつも思い出す。


 あの頃親しかった人。

 たまたま家が近所だったために自然な流れで遊ぶようになった彼。


 名前は確かオールトだったか……。


 彼と過ごす時間は楽しかった。純粋に。余計なことなど一切考えることなく、真っ直ぐな心で、無邪気に遊んでいられた。彼と一緒にいる時だけは。


 ――私は今朝婚約者から婚約破棄を言いわたされた。


 何かやらかしたわけではない。

 失礼なことをしてしまったというわけでもない。


 なのに、彼は、私を捨てた。


 もうとにかく悲しい……。

 もうとにかく胸が痛い……。


 生涯を共にする、そう覚悟したのに。


 彼はそれを自分一人の都合で白紙にしたのだ。


 ああ、悲しい。涙が出てしまいそうだ。


 ただそれでも朝は来る。

 どんな夜もいつかは明けるもの。


 そう信じて耐えることを選び、やって来た朝に家の近くを散歩していたら――。


「もしかして、マリ!?」

「え」

「俺だよ! オールト! 昔よく遊んでただろ!? なぁ!」


 衝撃の再会が襲いかかってくる。


「オールト!?」

「マリ!!」


 ずっと会いたかった人が目の前にいて。


「久々だな! 最近この辺の仕事になってさー」

「嘘でしょ……」

「元気にしてたか?」

「ええ、まぁ……」

「何かおかしくないか? 顔がさ。なんか楽しくなさそうだけど」


 私は思わず抱きついた。


「会いたかった!!」


 ずっと抱えていたけれど誰にも明かせなかった感情が溢れ出す。


「話したいことがたくさんあるの」

「まじで」

「そう。そうなの。というか、まず、昨日大変なことがあったのよ。聞いてくれる!?」

「ああ、聞く聞く」

「ほんと!? ありがとう! 嬉しいわ!!」


 こうして思わぬ形で再会した私とオールトの関係は瞬く間に発展してゆき、二年も経たないうちに結婚したのだった。


 ちなみに元婚約者の彼はというと、彼の父親が勝手に作っていた借金の返済を押し付けられたために怖い人たちに追われるようになってしまい今は国中あちこちを逃げ回っているらしい。



◆終わり◆

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