姉の婚約者を奪って満足ですか? ~その人、かなり厄介な人ですよ~
「お姉さまの婚約者はこのわたくしがいただきましたから!」
妹エネラがそんなことを言ってきたのは。
「すまない。君との婚約は破棄とする。そして妹さんと改めて結婚への道を進めていこうと考えている」
私の婚約者ディヴォスが関係の終わりを告げてきたのと同じ日であった。
二人は突然私の前に現れた。それも凄く仲良さそうな様子で。そして告げてきたのだ、私とディヴォスの関係が終わるということを。いや、もう既に、水面下でほぼ終わっている状態だということを。
「ディヴォス様はお姉さまよりわたくしを選んだの。分かるでしょう? だって、お姉さまよりわたくしの方が可愛くて魅力的ですもの! じゃ、そういうことなので。お姉さまはもう要りませんわ」
こうして私と彼の関係は終わり、妹は勝ち誇ったような面持ちになった。
……だが彼女は知らないのだ。
本当のディヴォスがどういう人か。
あの後、エネラはディヴォスに高圧的に当たられるようになり、結果心を病んだ。
そしてある日の晩。
突如自ら死を選んだのだった。
親はエネラの悩みを知らなかったようで、かなり驚いていた。
……そう、結局、誰も知らなかったのだ。
ディヴォスの本当の顔。黒い部分。それを知っているのは私だけだった。なんせ彼は外面だけは良いから。近しい関係にならない限りはその悪しき部分は見えないのだ。
ああ、可哀想に。
あんな男に捕まらなければきっと今も楽しく生きていられただろうに。
……だが自業自得だ。
エネラはディヴォスを奪うことで私にマウントを取りたかったのだ。ならばそれができて良かったではないか。夢はもう叶ったのだ、それならその後彼女がどうなろうが知ったことではない。エネラがやりたかったことはもうできたのだから、その先などどうなろうが私には無関係だ。
婚約破棄された日から数ヶ月。
私にも良い出会いがあった。
柔らかさのある容姿ながらしっかり者の彼と今はとても楽しく過ごせている。
彼となら、もしかしたら、良き未来を掴めるかもしれない――。
◆終わり◆




