私の実家の資産狙いだったのですね。……ということで、貴方とはさよならします。
出会って間もない頃、貴方は私を愛してくれていた。
好きだよ、と。
愛してる、と。
いつだって微笑んでそう言ってくれたのに。
でもいつからかな。貴方は変わってしまった。あの優しくて温かな貴方は幻であったかのように塵になって消えてしまって。気づけば私が愛しく思っていた貴方はいなくなっていた。
そして聞いてしまったの。
――私の実家の資産狙いで私と親しくしていたことを。
貴方は友人に笑いながら話していたわね。馬鹿にしたような笑みを浮かべながら「本当ならあんな女どうでもいい」とか「あいつが騙されやすい女で良かったわ」とか平然とそんなことを言っていたわ。それも、まるで軽いジョークでも口にしているかのような雰囲気で。
だから貴方には幻滅したの。
だから終わりにすることにしたの。
「貴方との婚約は破棄します」
……そう告げた時の貴方の情けない顔は今思い出しても面白いわ。
私に捨てられるとは思わなかった? そうでしょうね。だって貴方は完全に私を馬鹿にしていたもの。どうせ大したことはできないだろう、そんな風に思っていたのでしょう? 私を馬鹿にして、見下して、そうやって生きていた貴方からすればそういう認識が普通だったのでしょうね。私を舐めていたのでしょう? 所詮何もできない女だと思っていたのでしょう?
でも残念。
貴方が思っているほど私は馬鹿ではないの。
私を傍に置いておきたいなら、我が家の資産を手に入れたいなら、いろんな意味で頭を使って……もっと上手くやるべきだったわね。
◆終わり◆




