魅力がない。価値がない。そんなこと、よく平然と言えますね。
「お前なんてなぁ、魅力ねーんだよ! 婚約は破棄だ!」
思春期頃からやんちゃだった婚約者ルロバスはある日突然思い立ったかのようにそんな宣言をしてきた。
彼が言うには私は価値のない女らしい。
……馬鹿げた話だ。
人の価値、女の価値、それを決めるのはルロバスではない。少なくとも、彼一人ではない。そもそも価値なんて自身が決めてそう思えば良いものだし、頼まれてもいないのに他人が決めるものでもないだろう。
「婚約破棄……ですか」
「分かったか?」
「はい」
「魅力ねーって理解できたんだな!? 価値のない女だって分かったんだな!?」
「……それは分かりません」
「はぁ!? 馬鹿か? まだ分からないのか!?」
「他人の価値をそうやって勝手に決めないでください」
こうして私たちの関係は終わった。
なんてことのない夏の日だった。
◆
あれから私は舞踊を極める道へと進んだ。
昔から踊りは好きだった。だが本格的に学んだことはなくて。婚約破棄されたのをきっかけに踊りに本格的に挑戦してみたいと考え、私は師についた。で、そこでたくさんのことを学んだ。舞踊のことはもちろんだが、それ以外の大切なことも。師は人格者だったので傍にいるだけでもたくさんのことを学ぶことができる日々であった。
そしてついにスターの道を駆け始める。
私は光。
私は流れ星。
どこへだって行くつもりだ。
そんな風にして私が充実した日々を歩んでいたちょうどその頃、ルロバスはどんどん堕ちていっていた。
少し大きめな仕事の失敗があったことがきっかけとなったようだ。失敗によって酷く落ち込み、酒に依存するようになり。次第に酒場に昼間から入りびたるようになっていったようで。今では一日中酒場にいるそうだ。しかも常に酔っ払っているような状態とのことである。
ああ、なんて惨めな人生……可哀想に。
◆終わり◆




