真実の愛のためなら、険しい道でも歩めるものですね。~私が愛する人は彼女だけです~
なんてことのない、平凡な夏の昼下がり。
「あんたには飽きた」
婚約者から告げられたのは。
「だからおしまいにしよう。婚約は破棄とする。さよなら、永遠に」
――関係の解消だった。
◆
「で、強制的に婚約破棄されたってこと?」
「そうなの……」
あの衝撃的な出来事から一週間。
ようやく現実を現実と捉えることができるようになってきた。
今日は同性の親友ミリアとお茶をしている。
婚約破棄されたという話を聞いた時、ミリアは、とても驚くと同時にかなり心配してくれていた。
というのも彼女は親友をとても大切にする女性なのだ。
これまでも私に何かあるたびに色々気にかけてくれていた。
「でもさ、ま、良かったよ。もっと落ち込んでるかもって気になってたから」
「ミリア……ごめんね、心配かけて」
「いやいや! いーの! あたしが勝手に心配してただけだし」
「こんな風に傍にいてくれる人がいて私はとても幸せ。だから感謝しているの。ありがとうミリア、本当に」
ふとした瞬間の頬を赤らめるミリアはとても可愛らしい。
「う……そんな風にお礼言われたらちょっと……照れるじゃん」
日頃はさばさばしているのに時折乙女になる、そんなミリアが好き。
「ミリアってたまに赤くなるね」
「や、やめてって!」
「ごめんごめん」
「んもー! おもちゃにしないでよー」
私が大切にしたいのはミリアだ。
◆
あれから十二年。
私とミリアはこの国で初めてとなる同性結婚を形にした。
今は二人、共に、一つの屋根の下で暮らしている。
同性で結婚なんて。そんな風に言う人もいたけれど。私たちは共に困難を乗り越えてきた。そして夫婦になった。いや、正しくは、掴み取ったのだ。夫婦という形を。
女性同士であっても良きパートナーにはなれるのだ、と、私たちはこれまで多くの人に伝えてきた。
そして、今まさに、それを現実のものとしてこの世界に見せている。
「そういえばさ。元婚約者いるじゃん」
「ええ」
「あの人亡くなったらしいよ」
「そうなの?」
「何か事故だって」
「へえ……知らなかった。教えてくれてありがとうミリア」
◆終わり◆




